青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
――どんなに神様に祈ろうとも、時間は無常に過ぎていくもんだ。
時間を刻む針の速度が妙に速く感じて、気付いたら昼休み、気付いたら5限目、気付いたらSHRになっていた。
時間って変だよな。
早く時間よ過ぎろ、と思う時は、メチャ遅く時間が過ぎていって。
遅く時間よ流れろ、と思うときは、目まぐるしく時間が早く流れていく。感じ方の問題なんだろうな。
そうそう昼休みにヨウが教科書を返しに来た。
ついでに飯に誘われたから、俺、ヨウと一緒に体育館で昼飯食べた。いや俺、弁当だから教室で食おうと思っていたんだぜ?
けどヨウが「弁当持って行けば良いだろ?」なんて言って来るんだぜ? 断れねぇって。
此処で変に断ったら「ナメてんのか?」とガン飛ばされるに違いない。
だから仕方なくヨウと体育館で昼飯を食ったという。しょーがねぇ! 俺はノーとは言えない日本人だから!
そういえば途中、タコ沢がやって来た。
もしかして雪辱を晴らしに来たのかなー? と思ったら、ヨウの飲み物届けに来ていた。
「遅ぇタコ沢。もっと早く買って来れねぇのか?」
哀れタコ沢、ヨウに文句を言われていたという。
タコ沢は青筋を立てて「俺は走って買ってきたァアアアアー!」叫んでいたけど、ヨウは片耳塞いで「うぜぇ」って切り捨てていた。
タコ沢、諦めろ。
ヨウに喧嘩を売った時点で、お前の人生パシリにされる運命だったんだよ。
同情しながら俺、タコ沢に視線を送った。
そしたらタコ沢が「そんな目で見るんじゃねえ!」とキレてきた。
しかも、
「田山圭太……いやケイ! 表に出ろやゴラァアアア!」
喧嘩を吹っ掛けられた。
流石に喧嘩売られてビビッた俺は、持っていた弁当を投げそうになった。弁当を投げる構えになった。
これは自己防衛、勿体無いことをしてでも身を守る自己防衛だ。
タコ沢は本当に投げるんじゃないだろうな、俺を睨みつけながらも逃げる態勢を取っていた。
「投げちまえケイ。またタコウインナーでも乗せてやれ」
面白おかしそうにヨウが言ってくるもんだから、タコ沢が顔を赤くして肩を震わせていた。
「俺は谷沢ダァアアア! 覚えてやがれぇえええ! いつかケッチョンケッチョンにしてやるからなあああ!」
吼えるだけ吼えてタコ沢は逃げ去った。
俺に喧嘩を売ってもヨウが買うと分かっていたから逃げたんだろうな。ホント哀れ、タコ沢。
でも谷沢よりタコ沢の方がしっくりくるぞ。
あとケッチョンケッチョンはあんまりな表現だぞ。
ケッチョンケッチョン発言でヨウは大爆笑していた。
ボンヤリと昼休みのことを思い出しながら、通学鞄に教科書を詰め込む。
これから、俺、どうなるんだろう。
明日、学校に来られるかどうか。
「田山」
「……利二。何だ?」
手を止めて、声を掛けてきてくれた利二の方を見る。
「本当に行くのか? 放課後……大丈夫なのか?」
「明日、俺が此処にいなかったら何かあったと思ってくれ……ッ、利二、俺、死ぬかもしれねぇええ!」
「お、落ち着け田山」
利二の肩を掴んで俺は、溜めに溜めていた気持ちを爆発させる。