青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
不良達の後からやって来たのは、ママチャリを漕いでるモトにヨウ。
喧嘩光景に揃って驚愕している様子。
だよなぁ、榊原チームの数人は倒れているし、俺等は俺等で榊原チームであろう不良に助けられているし。
ママチャリを停めたモトはホシの姿を見るや否や、
「アァアアアア! カマ猫! なんでこんなところにっ、いつもながらその髪の色うぜぇ!」
「出たぁ。ヨウの犬! なーんで現れるんだよぉ」
ぶーっと可愛らしく脹れる(だから可愛くないって!)ホシに、「うぜぇえ!」モトは髪を振り乱してギャンギャン吠えていた。ほんと仲が悪いんだな、あいつ等。
モトの出現によってホシは機嫌を悪くしたのか、
「帰る」
フンッと鼻を鳴らしてハジメにズカズカ歩み寄ると、
「携帯は返せよ」
手から奪い取ってズンズン副頭さんのもとへ。
健太も今日は引き返す空気を読んだらしい。
俺に向かって舌を鳴らしたと思ったら、そそくさと大通りの道に視線を流した。
「アイテテ」
見ず知らずの不良さんの手を借りて上体を起こす俺に、
「ケイ!」
ヨウが駆け寄って立ち上がる手伝いをしてくれる。
その最中、榊原チームに疑心の目を向けた後、宿敵である副頭に視線を飛ばした。
「テメェ等……」
「安心しろ。『エリア戦争』に係わる気はない。たった今、榊原チームと協定を解消したところだからな。どうやらそいつ等は、貴様等の協定と見た」
「は?」どういうことだとばかりに瞠目するヨウを差し置いて、
「内紛しているチームと手を組んだところで此方に利はない。今日は身を引いてやる」
副頭さんは次回会う時は楽しい喧嘩にしようと別れの挨拶。
喧嘩に楽しいも何もないと思うのは俺だけか?
いや、ツッコんじゃいけないところなんだろうけど。
さっさとトンズラする副頭さん、携帯が疵付いているとむくれているホシ、それから早足で仲間の後を追う健太。
だけどすぐに足を止める。
「ケン?」
先を歩くホシ達が振り返る中、健太は前触れもなしに高笑いを零した。
仲間達がすこぶる驚いていたけれど、健太は愉快だと、楽しくなってきたと額に手を当て、体ごと俺の方に向いた。
「ケイ、次会う時が楽しみだな。ははっ、お前を潰すのは誰でもないおれだ。荒川の舎弟なんて知るか。ヤマトさんのお気に入りなんて知るか。おれはお前を殺す勢いで潰す。それこそお前の抱く妄想すら潰してやるさ。
ははっ、あっはっはっは、お前がいつまで夢を語れるか見物だよ!」
狂ったように笑い、健太は憂慮を向けている仲間達の脇をすり抜ける。
過去の関係ごと俺に背を向けて歩く健太。
俺は独り言を呟いた。
それはツッコミという名の、悲しい独り言。
「どこのアニメ台詞だよそれ、お前、漫画の読み過ぎなんじゃね?」
健太、お前が苦心した上でその選択しか見出せなかったというのなら、俺は何も言わない。
それがお前の答えなんだろうからな。
俺にとやかく言う権利はないよな。
お前は俺以上に長く苦しんで、苦悩した上でその答えを出したんだろうから。
だけど、お前が俺の答えをとやかく言う権利もない。
俺は俺なりに苦悩して、辛酸を味わって、挫折しながらも答えを見出したんだ。
いや、答えなんて見つけてねぇよ。途中段階だ。
どうすりゃ分からない暗中模索状態だけど、俺はお前を捨て切ることはできない。
だから言うよ。
何度だって、お前は俺の……友達だって。夢を語り続けてやるさ。
お前が参ったというその日まで。