青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
チームを抜ける選択肢が来るならば、自身が不良をやめてしまうか、それともこれ以上チームに迷惑を掛けないよう身を引くか。
どちらにせよ、リーダーの思うような選択肢は永遠に来ないだろう、とケン。
「邪魔と思うなら別ですけどね。おれは……向こうの舎弟と確かな繋がりを持っていましたし。疑われる要素も、内輪を乱す要素も持っています。チームに支障が出るなら切り捨ててもらってもっ、アイッデ―――ッ!」
ストレートパンチをケンの頭に食らわしたためか、彼は頭を抱えて壮絶に身悶えている
。躊躇ないパンチは非常に堪えたようだ。
「ヤマトさん痛いです」
せめて加減して欲しいと申し出られるが、
「殴れって顔に書いてたからな」
要望に応えてやっただけだとヤマトは鼻で笑う。
そんな無茶苦茶な……ケンの抗議は右から左に受け流す。
一方、脹れ面を作るケンは頭を擦りながら心中で溜息をついた。
この人はいつだって自分の都合の良い理由で、人を打ち負かしてしまう。
「居場所だって思ってンなら、それでいいじゃねえか」
「え?」
不敵に笑うヤマトの心情がケンには読めない。
「クソめんどくせぇ奴だな。
ケン、お前がどー落ち込んでようと知ったこっちゃねえがな。誰も昔の手前についてなんざ何も言わねぇし、手前の過去なんざ誰も知ったこっちゃねえんだよ。誰が邪魔なんざ言った? 被害妄想も大概にしとけ」
ふーっと紫煙を吐き出し、
「一々気にしてられるか。他人の過去なんざ知るか、そこまで面倒看きれねぇよ」
リーダーは皮肉交じりに悪態を付く。
荒々しく素っ気無い物の言い草ではあるが、ケンには十二分にヤマトの気持ちは伝わってきた。
彼はこれでも心配してくれているのだ。
優しいなんて彼には程遠い言葉だが、これは彼なりの心配の表れであり、それゆえの皮肉だ。
呆気に取られていたケンは柔和に綻んで、
「ヤマトさんらしいですね」
少しずつビールを胃に流し込む。
炭酸と苦い液体が胃を支配し、体内で熱を帯びた。
「なんだか気が晴れました。いろんなことでグルグルしてたんで……此処にいていいのか、とか。おれのしたことは間違っているんじゃないか、とか。抜けた方がいいんじゃないか、とか」
「っつーか、テメェ、簡単にチームを抜けられると思っていたのかよ。
だったらおめでたい頭だな。テメェが決めたことには誰も何も言わねぇけどな、抜ける話は別件だぜ? チーム全体に関わるしな」
言葉を上塗りされ、ケンは意表を突かれた。
立てた膝に肘を乗せて、頬杖をつくヤマトは「阿呆だろ」バーカ、引っ掛かったなとシニカルに一笑を零す。