青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「どーしても抜けたきゃ俺の条件を呑むことだな。そうだな……フルボッコメニュー。チーム全員でテメェをフルボッコすっからそれに堪えろ。
見事堪えられたら、抜けてもいいぜ。
堪えられたらの話だけどな。そんだけ抜けるってのは難しいってことだ」
「それリンチって言うんですよ。ヤマトさんは本当にずるいなぁ。結局、抜けるなんてハナッから許していないじゃないですか」
遠回し遠回しに自分を必要としてくれるリーダーにケンは泣き笑い。
だから彼は非常に意地悪で優しく仲間思いの、皆から慕われるリーダーなのだ。
人の不安を根っこごと霧散させてくれるのだから。
決して周りからの評判は良いものではないが、内輪では誰よりも頼れる男だ。
自分は向こうのチームの頭、荒川庸一という男を話でしか知らないが、自分にとってついて行きたい男は彼ではなく、隣に座る男なのだと思っている。
(だいったいおれがこんなにも落ち込んでいるのは圭太、お前のせいだからな。お前がおれのこと、まだ友達とかほざくから)
過去に囚われているのは誰でもない自分。
向こうにいる絶交宣言を交わしたケイに、
『まだ友達だと思っている』
なんて言われてしまった。
表では冷然としていたが内心では酷く動揺してしまって、折角決めていた決心が鈍ってしまった。
過去も今も大事だとケイははっきりと自分にそう宣言した。
本音を言えば、自分も同じ思いだが……今は誰よりも隣で胡坐を掻いている男に一旗あげさせたい。
結局過去ではなく、自分は今を取りたいのだ。中学時代ではなく高校時代という今を手に取りたいのだ。
「ケン、俺の舎弟にでもなってみるか?」
「……え?」
ビール缶を傾けるヤマトが突然、舎兄弟の案を出す。
「だったらプレインボーイと対等に張り合えるだろ? 俺の舎弟になってみっか?」
「おれが……ヤマトさんの」
瞠目するケンだったが、少々冷静になって考えてみると、舎弟になるということはヤマトが自分の舎兄になるわけで。
確かにケイと対等になるわけだが、普段の私生活を考えれば自分はヤマトの弟分として、あれやこれや奔走しなければいけないような……いけなくないような……普段のヤマトの私生活を考えると……考えてしまうと……ふっかーく考えてみると……………。
「……。……。……ヤマトさん、ご好意だけで十分です。想像しただけで、ヤマトさんとおれじゃ不釣合いだって思いました」
「おい今、完全に三拍くらい間があったよな? んー? 俺の舎弟が嫌ってか? ケン」
「えーっと嫌っていうか。ホラ、ヤマトさん。面白い人好きじゃないですか! そういう人になってもらいたいと思います!」