青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
――こうして蓮さんとその同志達は、表向きでは榊原に従い、裏では虎視眈々とチーム崩壊の穴をあけるために奔走。
結局、俺達が勝てたのは手腕のあるヨウ達の力や団結、智ある作戦だけじゃなく、そうやって陰で動いてくれる“見えない仲間”がいたからだ。
彼等がいなかったらきっと日賀野達という厄介な援軍を呼ばれて形勢逆転。
負けていたかもしれない。否、負けていたのだろう。確証はないけれど断言できる。
彼らの真相を知り、感傷に浸ってしまう。
こうやって事情を聴くことはとても簡単なんだけど、此処までたどり着くのに随分時間を要した。
だって向こうのチームに属していた不良達が頑なに口を開こうとしなかったから。
事情を問い詰めても、口を揃えて「負けは負けだから」
弁解をするつもりは毛頭もなく、有るがままに現実を受け入れるの一点張りだったんだ。
それは凄まじかった。
教えて欲しい、負けた、教えて欲しい、負けたのやり取りが延々繰り返された後、痺れを切らした浅倉さんが土下座をして頼み込んだ。
まさか浅倉さんが持ち前の自尊心を投げ捨ててまで頭を下げると思わなかったらしく(向こうは度肝を抜いて止めさせていた)、彼等はとうとう根負けして重い口を開いてくれた。
本当に真実を語る予定はなかったみたいで語り部になる時間は長く、慎重に言葉を選びながら自分達の身の上に降りかかった事を教えてくれた。
すべての真実を知って、今、俺等は何も言えないでいる。
ほんっと……後味の悪すぎる勝利だよ。
向こうも抜けることは本意じゃなかったようだし、なにより裏で俺等に力を貸してくれてたんだぜ? 勝ちに酔えるわけないじゃないか。
何が悪かったんだろうな。
榊原の不満か?
確かに榊原は間違った。
仲間のあり方と、自分の考えを伝えるやり方を間違った。
けど回避できる手立ては幾らでもあった筈だ。
原因を突き詰めると榊原をそうしてしまう……不満に気付けなかったことだろう。
話を聞く限り、榊原もチームについては真剣に考えていたみたいだ。
ただやり方を間違ったんだ。間違っちまったんだ。
見失っていたんだろうな、本来の仲間のあり方に。
嗚呼、今回の喧嘩は喧嘩に勝って一件落着じゃない。
これから浅倉さん達はどうしていくんだろう。
それによって俺等協定を結んでいる荒川チームの動きも変わってくる。
都合のことイイコトを思えば、ハッピーエンドな展開になってくれないだろうか。
このままじゃお互いがお互いに終われないじゃないか。
お互いに傷付け合って、でも実は浅倉さん達に心はあって、皆を勝たせようと仲間達が奔走していた。
真実を知りながらも、裏切ったから、勝利したからの名目で敗者に制裁を……ンなことできるわけない。
そんなの報われないじゃないか。
「……ヨウ」
俺はリーダーにこの状況の打破策を求める。
「無理だ。部外者の俺にはどうすることもできねぇ」
ヨウは人の訴えを斬り捨てるように即答してくる。
不満げに相手を見据えるけど、リーダーの姿勢は変わらない。
「あいつ等の問題を俺等が引っ掻き回してどうする? これはあいつ等の問題。浅倉達が解決していくしかねぇんだよ。俺がしゃしゃり出てもお節介にしかなんねぇ」
ご尤もだけどさ。
俺は渋々と相槌を打って、向こうの様子を傍観することにした。傍観する以外にどうすることもできないよな。