青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
すると現在のチームメートからは賛同する笑みが零れた。
リーダーがそう決めるなら、自分達は従うまでだと返事をしている。
満足気に綻ぶ浅倉は、
「最初はギクシャクすると思う」
けど上手く纏めてやるさ、リーダーとして。
向こうチームにも安心させるように目尻を下げた。
俺は光景に胸が暖かくなる思いがした。
気持ちがあれば何度だってやり直せるのだと教えてくれる光景だった。
確かに双方、傷付け合ったかもしれない。
だけど、こうやって気持ちが通じているなら、何度だって仲間になれる。何度だって友達に戻れるんだよな。一光景に勇気付けられる俺がいた。
「申し出は凄く嬉しいです。和彦さん」
向こうチームにいった不良から声が挙がる。
ひとりの不良が代表として、立ち上がり浅倉さんに歩んでいた。
その不良は彼の前で立ち止まり、まずは礼を告げる。
次いで送った言葉は好意は受け取れないという謝罪の言葉。
頭を下げて、リーダーの願いを丁寧に断った。
過去を水に流し仲間として受け入れて再結成を望んでいるというのに、彼はその気持ちすら拒む。
これには語り部も傍観者も絶句するほかない。
流れ的には再結成になると思っていたというのに。
「なんでだよ」
堪らず口を挟んできたのは桔平さんだった。
お前等のことは許しているのに、そう率直に気持ちをぶつけると、謝罪をした不良が微苦笑を零す。
「今の俺達に戻る資格はないんだ。桔平」
「ンなことねぇよっ、だってお前等は」
言葉を遮るようにかぶりを横に振り、不良は同志である元榊原チームに視線を流す。
「此処にいる連中は皆、そう思っているさ。弱かったばっかりに榊原の言いなりになっちまって。
結局、手前の弱さが祟って裏切りの道しか選べなかった。ずっとこのまま言いなりで終わるのかと覚悟を決めたほどだ。けど、そんな時に俺達を声を掛ける男がいた。それが蓮だ」
曰く、蓮さんが中心となって引き抜かれた仲間に呼びかけ、反旗を翻す機を狙おうと何度も訴えたという。
臆病風に吹かれていたために榊原に逆らうことすら恐怖し、最初こそ誰も首を縦に振らなかった。が、蓮さんは諦めずに同志を集めようと行動を起こし、ついに彼等の心までも動かしたという。
「すべては貴方の舎弟のおかげでした。和彦さん。さすがは貴方の舎弟です。蓮は、貴方から離れてもなおチームと舎兄を思っていた」
彼がいなかったら脅しに屈して従順なチームメートとして成り下がっていたのだと不良は肩を竦めた。
「だから」
蓮がいないこの場で自分達が戻ることなど許されないのだと不良は話を続ける。
誰よりも行動を起こし、その一方で誰よりも苦悩していた蓮の姿を知っている。
終わりを望み、チームに決着をつけると覚悟を決めていた“リーダー”なしに自分達は戻ることなどできやしないのだと彼は主張した。
「本音を言えば、和彦さんの気持ちは受け取りたい。ですが蓮が今の、俺達のリーダーです。蓮の意思が此処に無い以上、気持ちを受け取ることはできません」
「……蓮は今、どうしてやがる? あの日以来、ちっとも連絡が取れねぇんだ。顔すら合わせてくれねぇし」