青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
浅倉さんの問い掛けに、向こうの顔が顰められる。
「終わりを手にした蓮は、ただただ無気力と化しています。
あんなに俺達を誘導していたくせに役目を終えた途端、ぜんまいの切れてしまった人形のように生気がなくなってしまいました。誰が声を掛けても生返事ばかり。正直、今の状態は危ないです。放っておけば何をしでかすか……」
「昔からあいつは責任感が強ぇからな。
よし、おりゃあ今すぐにでも蓮に会いに行く。あいつを説得させて、蓮を含んだおめぇらを連れ戻す。
それで文句はねぇだろう? あー、おりゃあガタガタと過去をねちっこく言うのは億劫なんだ。さっさと終わらせてチームを再結成させたいんだよ」
過去に縛られている元チームメート達に、
「てめぇ等の悔やみは俺の悔やみでもある」
だからこそ一緒に過去を清算していこうと歯茎を見せて綻ぶ。
これには話し手となっている不良も不意を食らったようで、
「そんな貴方を今でも尊敬していますよ」
力なく笑っていた。
どことなく泣きそうな顔を浮かべていたのは俺の気のせいとしておこう。
別の不良が浅倉さんにこう申し出た。蓮を救って下さい、と。
誰よりも自責の念に駆られている蓮さんは、エリア戦争後、まったく食事を取っていないそうだ。負傷した身の上だというのに。
「こんなことを言うのはおこがましいようですけど、きっと蓮を救えるのは和彦さんしかいないと思います。エリア戦争後は俺達にすら心を見せなくなっているんですよ。あいつ」
「そりゃ、やっべぇな。そうなった蓮は誰の話も聞こうとしない。ああくそっ、こりゃあ長期戦か?
望むところだ、あいつを説得してみせらぁ! 待ってろ畜生が! あいつは俺の舎弟だ。サシで話してやるよ」
そっか。
蓮さんは舎兄に背を向けたことを相当悔やんでいるんだな。
事情を聴く限り仕方が無かったことだと思う。
仲間を助けるために、向こうのチームに行かざるを得なかったのだから。事情は十二分に理解できる。
……だけど俺は蓮さんの気持ちも痛いほど分かる。似たような経験したからこそ、彼の気持ちが手に取るように分かるんだ。
浅倉チームの行く末を心配する一方で、蓮さんの心情が気掛かりで仕方が無かった。
今の状況下じゃ蓮さんは浅倉さんの話を素直に聞いてくれるとは思えない。大丈夫かな。懸念を強める俺がいた。