青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
一週間後、俺の心配は見事に当たってしまう。
協定チームの俺達にチームの近況を報告しに来てくれた浅倉さん曰く、チームの状況は変わらず。
向こうの中心人物になっていた蓮さんと会い、話し合いに持ち込もうとしても蓮さんは一切応じてくれないそうだ。
真相を聞いたと言っても、
「俺はあんた達を裏切って抜けたから」
の一点張りで、さっさと立ち去って行くそうな。
とにもかくにも浅倉さん達を避けまくっているらしく、姿を見つけ出すのにも苦労するという。
家に行ってもまったく会ってくれず、彼を追い駆け回す日々になっているとか。
これじゃあ話し合いどころか、顔合わせだけで時間の大半を要する。
浅倉さんは現状に、ほとほと困っているらしい。
「長期戦になるとは分かっていたが、出鼻からこれじゃあな。蓮は一度そうだと決め込んだら、頑固になる奴だ。責任を取って身を引こうと思っているんだろうが……俺の気が済むわけねぇだろうが。ったく」
苦虫を噛み潰したような顔を作って語ってくれた浅倉さんは、まず舎兄弟問題として解決していこうと考えているらしく、同じ立ち位置にいる俺とヨウに相談を持ちかけてきた。
どうすればいいのか、を。
今の舎弟・桔平さんとも十二分に話し合ってはいるんだけど、打破策が見つからないらしくお手上げ状態なんだって。
うーん。どうすればいいのか……と言われても、こればっかりはなぁ。
これは浅倉さんや桔平さんの問題じゃなくて、蓮さん自身の心の中の問題だと思う。
舎兄弟とかチームとか、そういうものじゃなくて、蓮さん自身が自分の起こした問題を許せるかどうかの問題だと俺は思っている。
口に出すことは無かったけれど、俺はそう考えていた。
「しかし蓮って奴を仮にチームメートに戻したとしても、舎兄弟はどうするんだ? テメェ等」
素朴な疑問をヨウは投げ掛けた。
ご尤もだ。
仮に蓮さんがチームに戻って来てくれたとしても、舎兄弟の件はどうするんだろう。
桔平さんを舎弟から外して、蓮さんに舎弟に戻ってもらうのが妥当なんだろうけど……桔平さんは桔平さんなりに頑張っていたと思う。
だからって桔平さんが舎弟のまんまで、蓮さんがただのチームメート、じゃあ蓮さんが心苦しくなるんじゃないか?
同じことをヨウも思っていたらしい。
「今のままじゃ不味いだろ」
どうするのだと、浅倉さん、桔平さんに尋ねていた。
すると浅倉さんと桔平さんは柔和に綻んできた。それについてはもう考えてあるようだ。
「おりゃあ、一方的に蓮に舎兄弟を解消されちまった。あいつが許してくれるならもう一度、奴の舎兄になりたい。
でもって桔平は、誰よりも傍で俺を支えてくれた。こいつも舎弟の枠を外すつもりはない。
別に舎弟はひとり、なんてルールねぇしな。
これからのことを考えると副頭とは別に俺を支えてくれる奴等が必要だ。特に桔平や蓮みたいな奴が俺には必要だからな。
おりゃあ、最初から舎弟を二人持つと決めている。
舎弟は舎兄の後継者だの背中を託すだの言われてる存在だけど、おりゃあ、舎弟ってのは舎兄を支えてくれるありがてぇ存在だって思っているよ。桔平も承諾済みだ。な?」
「ええ、俺は一向に構いませんよ。新旧舎弟として蓮とうまくやりたいと思っています」
きっとうまくやれるだろうと誇らしげに笑う桔平さんの肩に手を置き、こういうことだから大丈夫だと浅倉さんが片目を瞑る。
「後は蓮がどう思ってくれるかだが……舎弟の件じゃうまくやっていけそうだ」
衝撃が走ったのは俺達舎兄弟の方だった。
舎弟を二人持つ。
そ、そういう考えもあったのか。
いや、確かに舎弟は一人、だなんてルールは何処にもない。
寧ろ不良漫画ではひとりの親分不良が多くの舎弟を率いている。
ああ、なんてこったい! 俺達の舎弟問題もそうすれば普通に解決したんじゃ!
「よ、ヨウ! 今からでも遅くないぞ。弟分達を舎弟にしちまえ!」
「そ、そうだな。うっしゃ、俺もこれから舎弟を増やす! モト、キヨタ、おめぇ等は今日から俺の舎弟だ!」
「うぇえええ、俺っちケイさんの舎弟がいいッスよ!」
「お、オレもそれはちょっと……」
遠慮する後輩達に迫るものの、各々首を横に振って遠慮されてしまう。
どうやら俺達ではうまくいかないようだ。
浅倉さん達だからこそうまくいく解決策らしい。まる。