青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
(ふ、所詮世の中は顔なんだよなぁ。世知辛い!)
俺なんて女子からろくすっぽう相手にされたこともない。
可愛らしい女子生徒を見る度に、「あ。タイプ」と胸を躍らせるものの、そういう子は大抵顔のいい奴に取られていく。もしくは顔のいい奴にしか興味がない。
俺の顔ってパッと見の平々凡々。
簡単に言えば普通なんだフツー。頭の良さも運動能力も平均並。
クラスの中で目立つタイプでもないからさ。
女子の皆さんの中には俺の顔を見て「えっと……」と、一生懸命に名前を思い出そうと首を捻ってくれる方がいるほど、地味で平凡なフツーの男子生徒なわけ。女子の皆さんにとって魅力は皆無だろう。
そんな地味男には、じっみーな奴等しか寄ってこない。
『類は友を呼ぶ』ってヤツかな。
地味で平凡なフツーくんには、これまた地味で平凡なフツーくんが落ち着く。
文句はないよ。
気の合う奴とつるむのが一番だしさ……そうだよ、俺は今日(こんにち)まで地味に、平和に、教室の片隅でひっそりと生きてきた筈なんだよ!
(なのにっ)
放課後、恐々体育館裏に足を踏み入れた俺は待ち人となっている男子生徒に悲鳴を上げたくなった。
学校一の問題児と称されているイケメン不良が携帯を弄りながら俺を待ってやがる。醸し出されているオーラが神々しい、いや魔々しい!
あれで俺とタメ、同じ人種、同じ性別とか嘘だろ。
次元の違う人間に思えるんですけど!
お前、三次元の人間じゃないな! 高校生の分際でキンパに赤メッシュとか、ありえねぇだろうよ! お前は二次元の住人か!
「んっ、来たか? 田山」
校舎の壁に背を預けていた荒川は、気だるそうに携帯を閉じて上体を直立させる。
どーも。遠慮がちに手を振り、「大変お待たせしました」田山は今、到着しましたとぎこちないスマイルを向けてみる。
それに対し、キャツは「ん」と、返すだけである。
えーっと……それはどういう「ん」なの?
別に気にしていないの「ん」なの?
それとも待ちくたびれたの「ん」なの?
はたまた別の意味が含まれている「ん」なの?
一文字で返事されても田山、わかんないんですけど。
ここで地味友相手なら、ごっめーん。待ったぁ? 支度に手間取っちゃって。おデートだから張り切っちゃったのぉ、とかノッてみるんだけど相手はイケた不良。
そんな馬鹿な真似はできっこない。
した日にはグーパンチで向こうまでぶっ飛ばされそうだ。