青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「た、たんまたんまたんまー! ストーップ!」
聞く耳持っちゃくれないし!
拳を振り下ろしてくる不良の攻撃を、紙一重で避ける。不良は手慣れたようにもう1発拳をお見舞いしてこようとする。
今度は避けられそうにねぇ……ってか、なんでイキナリ攻撃しかけられるんだよ!
疑問よりも自己防衛が先に働いた。
振り上げてくる拳を受け止める為、俺は持っていた通学鞄を盾にする。
おかげで拳が顔面に当たることは無かった。
受け止めた勢いで後ろによろけそうになったけど、どうにか踏ん張れた。
凄いぞ俺! 不良のストレートパンチを鞄で受け止めた……悠長にそんなこと思っている場合じゃねえし! まだ攻撃を吹っ掛けてこようとしているんだって、コイツ!
蹴りを入れようとしているのか、右足が宙に浮いた瞬間を俺は見た。
喧嘩慣れしてない俺にとって絶体絶命!
だけど次の瞬間、不良の顔面に煙草の箱が投げられた。
不意打ちを喰らった不良は「イッテー!」顔面を押さえている。
箱の角が額に当たったようだ。
とにかく……嗚呼良かった、蹴られずに済んだ。
俺は体の力が抜けて鞄を床に落とす。
胸に手を当て自分自身を落ち着かせる。
大丈夫、大丈夫、だいじょーぶ、俺はまだ生きているぞ。
何度か軽く深呼吸をしていると、俺の肩に誰かの手が置かれた。
俺は間の抜けた声を出して大袈裟に後ろを振り返る。
そして後ろを振り返ったことを後悔。
俺の肩に手を置いてきたのは、煙草を銜えているフロンズレッド(金赤色っつーの?)した女の子。
背丈が俺よりも少し高い。俺、これでも170はあるんだぜ?
なのに俺にやや視線を落としているって、この人どんだけ背が高いんだよ。
フロンズレッドの女不良は俺を満遍なく見てきた後、軽く息を吐いて俺の頭に手を置いてきた。
突然の動作に俺は当惑。
対照的に彼女はふんわりと微笑んできた。
フロンズレッドの女不良は俺を満遍なく見てきた後、軽く息を吐いて俺の頭に手を置いてきた。
突然の動作に俺は当惑。
対照的に彼女はふんわりと微笑んできた。
「怪我はねぇか? あったら遠慮なく言えよ」
「べ、べつに怪我ないデスケド」
「そっか。なら良かった。驚かせて悪かったな。テメェ、喧嘩慣れしてねぇってヨウから聞いていたから」
グシャグシャに髪を撫でて俺の肩に手を置くと、後ろにガンを飛ばしていた。
つられて俺も後ろを振り向けば、ムスッと脹れている金髪不良が額を擦っていた。
「おいコラ、モト。テメェ、何腐ったやり方で挨拶してんだ?」
「だぁああああああって! ヨウさんが舎弟作ったって言うからぁああああ! どんな奴かカラダに聞いてみようって思ってッ」
フロンズレッドの女不良さまは、金髪不良の、男だったら1番突かれたくない急所を蹴り上げた。
痛さに悶えてその場にしゃがみ込む金髪不良に、俺はかなり同情した。
アレは痛い。絶対痛い。
呼吸が出来なくなるくらい痛いに決まっている!
「何がカラダに聞いてみるだ。そこで反省してろ馬鹿が。ホント悪かったな、向こうに行こう」
「え……けど、この人」
「放っとけ放っとけ。当然の報いだ」
ぞんざいに言い放つフロンズレッドの女不良さまは、俺の背中を叩いて笑いかける。
フロンズレッドの女不良さまって口調は荒々しいけど、曲がったことは嫌いなようだ。
俺のような奴を気にかけてくれる。姉御肌という単語がぴったりだ。
でもさっきの蹴りを見ていたら女番長って感じがするんだけど。普通に煙草を吸っているし。
フロンズレッドの女不良さまに流されるまま、俺はヨウやそのダチのいるところへ向かった。
ヨウは呆れたように金髪不良に目を向けている。
「モトの奴、何しているんだ? ったく。ケイ、お前、よくモトのパンチかわせたな。喧嘩慣れしてねぇだろ?」
「してるわけねぇーよ! っ、恐かったッ……マジ恐かったーっ」
「悪い。モトには後で言っとく。モトの紹介は後回しで、まずこいつ等から紹介するぜ」