青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「へえ、ココロも女だなぁ。ケイのためにとか、男心分かっているよなぁ。ケイ、愛されてるぅ」


ニンマニンマのヨウ。

完全にからかいモードだな、ドチクショウ。


「バカ、ココロはうちの自慢の妹分だぞ。男心だって、簡単に察することのできるスゲェ女に決まっているだろうが」


鼻高々の響子さん。完全に親馬鹿、姉馬鹿? モードに入っている。

猫可愛がりしているもんな、ココロのこと。


だから彼女を恋人にしましたと姉様に報告すると、


「泣かしたらうち等と同じ女になろうな」


満面の笑顔で脅された。

い、今思い出しても身震いだ。この人だけは絶対に怒らせないようにしよう、あの時……心の底から誓ったぜ。


とにもかくにも周囲の目がジクリジクリと突き刺さってくる。  


注目をしてきてくれてるっていうの?

微笑ましく見守って下さっているらしいんだけど、なんか一部悪意を感じる。


そこの舎兄とかな。見るからにからかいたくてウズウズしてる顔を作っている。


ああくそっ、皆寄って集って高みの見物か?!

羨ましいご身分だな!


不良のご身分はそんなにエライか!


……ワカッテマス、エライですよね。


俺、身を持って経験してますんでエライってのはワカッテマスです、はい。


嫌味な周囲の目を無視することに決めた俺は片手で頬を掻いて一呼吸、待っている彼女に表情を崩す。

おかしなことに気持ちは緊張していても、自然に笑える俺がいた。


「ありがとう。その気持ち、受け取っとくよ。なんか俺ってすげぇ幸せモノだ。ココロに倣って俺も頑張るよ。努力するから」


ちょっと力を込めて頬を掻きながら照れ隠し。彼女はますます照れ隠しをするように指遊びをする。


「あ、あんまり頑張らないで下さい。私が追いつけなくなります……その、私……頑張ってケイさんみたいに努力して、心を強くして……そ、そして」


そんなことないんだけどな。

ココロは十二分に努力してくれていると思うし、あんまそういうことされたら俺の方が参っちまうって。



「け、ケイさんのようにノリのいい子になりたいと思ってますっ、から!」



………俺?

ちょっと待とうか、色々と待とうかココロさん、全力の全力で待った。


ストップ・停止・落ち着こう! それは別の意味で俺が参っちまうから。


え、俺のように調子乗りになりたいって?

イェーイ田山圭太普通っ子万歳……的な乗りを君は受け継ぎたいおつもり?


は、早まるなココロ!

本人の俺が言うのも何だけど、俺のようになったらな、可愛さ半減だぞ!


いやもう全滅! 可愛さ絶滅!


寧ろ俺は泣く!

俺の性格第二号にでもなっちまったら、責任を感じて彼氏の俺が泣くから! 男泣きするから!


ココロは今のままで十分だ!

ナニが悲しくて俺と同じような調子乗り(女子版)を見ないと……ココロ、やめてくれー!


「今のままでいいです!」


全力で止めに入る。

ああ、止めて見せるさ。ある意味彼女のピンチ! 彼氏の俺は全力で止めてみせる!


「こ、ココロ! そこまで頑張らなくていいんだぞ! ノリの良さなんてあっても面白さとウケしか生まれないっつーかさ! いや、ココロの気持ちは受け取っとく! ありがとうサンキュセンクス! だけど今のままで十分なんだって、ココロは」


「ええぇえ……で、でもケイさんってノリの良い人が好きそうで。お喋りな子が好きといいますか……見ていたらそんな感じが」



俺好みのタイプになろうとしてくれている……のかな?


確かにお喋りでノリの良い子は大好きです。

今まで好きになった子のタイプは全部そうでした。


ココロさん、ご名答でございます。

よく俺を観察してらっしゃる。


だけどさ……あー……それは結局好きなタイプの話であり基本的に好きになる人の基準。


つまり枠ってわけで。実際に人を好きになったら、それまで築き上げていたタイプと違う人だっているわけだ。まさしくココロがそうだ。


「俺はココロが好きだから……そのままでいいよ。ノリとかそんなの気にしてないしさ」


照れのあまりぶっきら棒な物の言い方になったけど、本当のことだ。


「頑張って俺好みにならなくても、既にココロは俺好みというか……」

「ケイさん……」


「あー、ほら、俺みたいになっても……なあ? 可愛くないっつーか、うん、今のココロを好きになったというか」


う゛ぅうぇい。

なんだかすっげぇ気恥ずかしくなってきたぞ。

もう周りがどんな目で俺を見ているのか、見回す勇気もねぇや! チックショウ、分かっているよ、俺が言ってもギャグになるってことくらいさ!

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