青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
(仲間が傷付くだけなんじゃないか……最近はよく考える。因縁も何もカンケーねぇケイやココロ、弥生、キヨタにタコ沢とってしてみればいい迷惑だよな。
ケイなんざ……ダチと絶交宣言を交わしちまう始末だし。ケイ……ダチに直接言われていたな)
『ケイ、次会う時が楽しみだな。ははっ、お前を潰すのは誰でもないおれだ。荒川の舎弟なんて知るか。ヤマトさんのお気に入りなんて知るか。
おれはお前を殺す勢いで潰す。それこそお前の抱く妄想すら潰してやるさ。
ははっ、あっはっはっは、お前がいつまで夢を語れるか見物だよ!』
――と。
ヨウは倉庫裏で駄弁っている、カレカノの微笑ましい光景を見つめた。
彼女と和気藹々会話している舎弟はあどけない顔で笑っているが、チームに身を寄せているせいで辛い思いをしている。
舎弟という重い肩書き、不本意の絶交宣言、友人との対立に大切な者を作る不安。
恋人を作っても立場と状況を考え、今は極力外出を控えている。
自分はからかいがてらにケイに言ったのだ。
彼等が結ばれた夜、ファミレスに戻って来たケイに「明日にでもデートしてやれよ」と。
しかし彼は首を横に振り、それはできないと真顔で否定。
まさか真顔で否定されるとは思わなかったのだが、ケイは決着がつくまで恋人らしい行為はすべて控えると舎兄の自分に宣言。
彼女とよく話し合って決めたことなのだと、一変し微苦笑を向けられた。
滅多なことじゃ表には出さないが、この結末の見えない対立に彼は怖じている。
「あれれれん? こーんなところでいちゃいちゃ中? ケイちゃーん、ココロちゃーん」
「うわっつ?! ワタルさんっ、どっから現れているんですか!」
入り口という入り口から敷地に入るのではなく、金網フェンスを乗り越えて登場するワタルにケイもココロも驚き仰天。
「こんなところに隠れちゃって。もしかしてチューでもしようとしてたのかなぁ、お邪魔した?」
等々要らんジョークを言うものだから二人は赤面。
声音を張り「違う」と全力否定している。
ワタル自身、鬼(響子)の居ぬ間にからかおうという寸法なのだろう。
「またまたぁ隠しちゃってぇ」
肩を竦めてケラケラと笑っている。
しかし、人生山あり谷あり川あり、渡る世間は鬼ならぬ響子さまばかりである。
お局さまが隠れながら微笑ましく様子を見守っていたために一部始終を目撃。
「あんの阿呆! 弄るなっつっただろうが!」
響子は地団太を踏み、太い青筋をこめかみに浮かび上がらせる。そして握り拳を作るとズカズカ倉庫裏へ。
「くぉおらっ、ワタルぶっ飛ばされてぇかアンタ!」
彼女の怒声に、
「ゲゲゲの響子ちゃーん?!」
素っ頓狂な悲鳴を上げ後退するワタル。
絶対に一発くらす。
憤っている響子が逃げるワタルを追い駆け始め、ワタルは慌てて振り下ろされる拳から逃げるために二人の後ろに、ついでにココロ寄りに避難。
ココロの後ろが一番安全だと彼は知っているのだ。
おのれ卑怯な、ジリジリ詰め寄る響子が拳を作り直す。
フツフツと怒りを沸騰させる彼女に対し、ワタルはフンだと変に開き直ると発破を掛けるようにべっと舌を出して、
「僕ちゃーん冤罪掛けられたし?」
子どもっぽく唇を尖らせる。