青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
『抱いたもんは仕方が無い……責任取って僕は彼女の傍にいたいからさ。ヨウ、チームを抜けてもいいかな?』
次から次に爆弾発言を投下するハジメに、そろそろ俺もキレたい。チームが混乱してきたじゃないか!
「は? ま、待てってハジメ。テメェ、言っていること分かってンのか!」
『仕方が無いだろ。酒の勢いとはいえ、こうやってヤったんだし。僕がいるせいでチームの輪が乱れる。特に僕と弥生は……分かっているだろ、ヨウ。
チームを取るか、僕を取るか、君はどっちを取る気なんだいリーダー? 僕というお荷物を持ったせいで、チームの輪は乱れ、ヤマト達に負けることになるよ。仲間を受け入れる、確かにそれは大切だけど、同時に切り捨てることも大切だと僕は思う』
馬鹿みたいにハジメの声音が据わっている。
マジなのか、ハジメ。
マジでチームを……でも俺は信じられねぇよ。
だってお前、数時間前までメールで学校に行くと普通に返してきてくれてたじゃん。ワタルさんにだって、ヨウにだって、弥生にだって。
信じない。
俺は電話でハジメの本心を聞いたとは「分かった」
俺はヨウの返答に心臓を飛び上がらせた。
な、何を言っているんだよお前
ハジメのことを信じていないのかよ!
なんで分かったとか簡単に返事しちまうんだよ。それでも中学時代からの付き合いかよ!
なあ、ヨウ!
おかしいよ、お前っハジメの言葉、簡単に信じちまうのかよ!
「ヨウ!」
思わず名前を呼ぶ俺を無視して、舎兄は向こう同様落ち着いた声で言葉を重ねる。
「テメェがそう思うなら、俺は止めねぇ。俺はチームの頭だからな。チームの輪を乱されるのは不都合極まりねぇ」
ヨウ……お前……。
「だが、テメェの本気を知りてぇ。こんなチャチイ電話のやり取りで、イエス・ノーを決めるほど俺も甘かねぇぞ。
そんなに言うなら、俺の前で同じ事を言え。
じゃねえと抜けるなんざ一切認めねぇよ。
顔も見られねぇ電話じゃ本当なのか嘘なのかも分からねぇ。俺の前で同じ事を言え。俺が見定めてやる、テメェの主張を。
俺はチームのリーダー、同時にテメェのダチだ。顔を見て判断したい」
チームメートの前で堂々と言うヨウのその判断力に、俺は数秒前まで舎兄に対して思っていた貶し言葉を全てデリートしたくなった。
ははっ、舎弟のクセに俺も分かってねぇな、リーダーのこと。
ヨウが信じているわけないじゃないか。ハジメの言うことを、さ。
あいつは誰よりもハジメと付き合いが長いんだし、ハジメを不良に引き込んだ張本人だ。
誰よりもハジメのことを理解している。
そうだろ? ヨウ。
ごめんな、心中でもお前を貶しちまって。
リーダーの言葉にハジメは暫し沈黙、そしてクスリと笑声が聞こえた。
クスクスと聞こえてくる笑声は次第に大きくなる。
異様なまでに高笑いするハジメに、ヨウも俺達も呆気に取られていた。
だけどハジメは笑声を抑えることもせず、
『ほらね。こうなると思った!』
自分のリーダーを舐めるんじゃないとハジメは、ヨウじゃない、俺等にでもない、誰かに吐き捨てる。
『もぉ』
ぶーっと脹れ声の女の人を煩いと一蹴して、ハジメは高笑い。