青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



明かりが漏れている倉庫内には、既に俺とヨウ以外の全員が揃っていた。


大半がバイクだったから、戻って来るのにさほど時間が掛からなかったんだろう。

皆びしょ濡れのずぶ濡れで倉庫にいる。


徒歩組であろう女子群も傘も差さず、ハジメを捜していたみたい。


揃いも揃って重たそうな制服を身に纏っている。

頭から爪先までびっちょりだ。


明日チームメート全員、風邪をひかなきゃいいけど。


俺とヨウの姿に、全員揃ったかとシズがメンバーを再確認。


ハジメ以外の面子が揃ったことを十二分に確認して、シズは歩んでくるヨウにこれからどうすると話を切り出す。


無闇に捜し出そうとしても、時間を無駄にするだけだとシズ。時刻はもうすぐ八時。


これだけ捜しても見つからない上に、もう夜だ。

見つけ出すのに手間取るのは目に見えていると意見した。

分かっている、頷くヨウは助っ人を呼ぶと力強く仲間内に告げる。


協定を結んでいる浅倉さん達だ。

向こうなら人数も多いし、『エリア戦争』で戦友となった俺等にも快く手を貸してくれるだろう。


敵さんが言うには、既にハジメは解放されたらしいから、どこかに倒れている可能性もある。


早くハジメを見つけるためにも全員が調べたところを把握、まだ調べていないところを浅倉さん達と共に調べて捜し出すと言った。


把握する時間が惜しいとばかりにヨウは顔を顰めたけど、慌てて捜しても埒が明かないと分かっている。


手早く把握しようとしているんだ。


同じ場所を調べても、同じ結果しか現れてくれないと知っているから。



「此処からはケイ中心に行くぞ。土地勘に優れているのは、ケイだから」



「いいな? ケイ」ヨウに指名されて、俺は頷く。



できる限りのことはするつもりだよ。できる限りのことは。

けどちょっと座らせてくれ……俺もチャリ漕ぎ過ぎて足が死んでいる。体力の限界をとうに超しているから。


座り込むと大丈夫かとキヨタが声を掛けてきてくれた。


頷く俺は、早速始めようと皆に告げた。

急いでハジメを捜し出すためにも。





「あっちゃー。みんな……おそろい……大遅刻しちゃった……かな?」





皮肉交じりの聞き慣れた声音、俺達は衝撃を受けた。  



まさか……その声は。


弾かれたように俺等は倉庫の出入り口を見やる。



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