青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
悪ノリかましてくれた光喜のおかげで大切な事に気付いた俺は幾分、肩の力を抜くことができた。
また学校で生活を送っている間はオフモードになろうと決める。
そりゃあハジメのことや日賀野達のこと、そして健太のこと、色んな思いはあるけれど、始終ピリピリしても俺の方が持たない。
俺らしさもなくなる。
光喜が態度でそのことを教えてくれたから、俺も気を抜くところは抜く、気を引き締めるところは引き締める。
気持ちにメリハリを付けようと改めた。
地味友は俺の切迫していた心情を見抜いてくれていたのかもしれない。
授業の合間あいまに声を掛けてくれて、他愛もない話題を振ってきてくれる。
光喜の部活苦労話も聞かせてもらった。
利二のバイト愚痴話も聞かせてもらった。
透が今度展覧会に出品する絵の下書きも見せてもらった。
学校の風景を描いているらしいんだけど、これまた上手いのなんのって……いやぁ、磨ける才能あるって羨ましいと思ったね。
蛇足として、透と交わした会話の一部。
「今度さ、人物画を描くんだけど圭太くん、モデルにならない?
あ、荒川くんと一緒だといいかも! タイトルは勿論“舎兄弟”にするからさ! 我ながらナイスアイディア。凄くいいかも! 不良と地味っ子の夢のタッグ! 描いてみたい! 燃えてきたっ!」
「……あの、透さん透さん」
「圭太くん、是非とも荒川くんに頼んでみてよ。モデルになってくれませんか? って。お礼はうんとするからさ!」
俺には到底縁の無いであろうモデル話も振ってきてくれた。
勘弁しろって透。
そういう話はイケメンくんのヨウだけにしてくれよマジで。
俺がモデルになっても、有り触れた絵にしかならないんだぞコノヤロウ!
ヨウと俺のツーショット?
バッキャロ、俺の存在を霞ませるつもりか!
俺がヨウと並んでもなぁ、向こうの容姿を引き立たせるだけなんだぜ! 霞む俺、超絶可哀想だろうよ!
こんなどーでもいいやり取りがあってくれたおかげで、随分と息抜きができた。
充電できたっつーの?
不良とも友達だけど、俺は地味友とも友達だ。
それぞれ俺に必要な存在だと思っている。
学校にいる間はヨウ達も、あんまり日賀野達の話題、そしてハジメの話題は出そうとしない。
昼休みは他愛もない話で盛り上がった。
そうすることでオフモード、言い換えると充電期間を設けている。
ハジメは絶対に戻って来ると信じている俺達だ。
過度には心配をしないことにした。
あんまり心配をしすぎると、あいつを信じてないような気分にもなったしな。
沢山充電した後は放課後、たむろ場に赴いてオンモード。
緊張感を持ちながら日賀野達の実力、行動、個々人の把握を急いだ。
奴等一本に絞るために、他の喧嘩は極力控えている。
主に喧嘩をしているのはヨウ、ワタルさん、タコ沢辺りだから、俺には直接関係のないことなんだけどさ。
あー……喧嘩をよく吹っ掛けられているけど、そりゃ舎兄が喧嘩ばっか売るわけで?
それが俺に飛び火しているわけで?
……喧嘩のことは俺には関係ない。一切関係ないんだぞ。控えてくれて助かっている。うん。
とにもかくにも、眼中には日賀野チームだけを置く。
俺達は向こうチームを解体する勢いで集会を開いていた。
因縁を断つために、小競り合いを終わらせるために、これ以上犠牲者を出さないために。