青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「みんなー! 聞いて聞いて聞いて! 情報っ、手に入れてきたよ!」
今日もたむろ場で日賀野達のことについて集会を開いていると、遅れてたむろ場にやって来た弥生が情報を仕入れてきたとばかりに駆けてくる。
一日学校をサボって情報を掻き集めていたと言う弥生は、興奮気味に、そしてやや不機嫌に声音を張る。
「ハジメを襲った奴等の一部が分かった!」
途端に俺等は日賀野達の話題から、ハジメの襲った話題に話を切り替える。
いっちゃん知りたかった情報を弥生が仕入れてきた。
集会は日賀野達中心だけど、間接的に関わっているであろうハジメを襲った輩は俺等にとって最重要視しないといけない話題だ。
ヨウは早速、弥生に話を聞かせて欲しいと頼む。
うんっと一つ頷く弥生は、事細かに説明を始めた。
「あの日、ハジメは家を出てから真っ直ぐ学校に行くつもりだったみたい。でも途中で不良の群に絡まれて、四丁目10番地にあるマンション一室に拉致されてたみたいなの。
多分、不良の群の中の誰かのマンションの一室だと思うけど、何号室にいたかまでは分からなかった。
不良がいるマンションならすぐに何号室か把握できたと思うし、主犯も割り出すことができたと思うんだけど……どうも不良と繋がりを持った一般人の部屋を奴等は借りてたみたい。
ハジメが何号室に拉致されていたのか分からなかった。
14階建マンションだから部屋も多くて……ごめんね、力不足で。
取り敢えず、ハジメはマンションで軟禁されていたみたい。
室内でフルボッコにされてたみたいなんだ……私達がどんなに外を捜し回ろうとも見つからない筈だよ。ハジメは室内にいたんだから。
舐められているよね、ほんと。
逃げ場所もなくハジメは悪意あるフルボッコ……ううん、リンチに耐え続けていたんだと思う。
解放されたハジメは、その体で私達の下に戻って来た。
足を引きずって歩くハジメが歩道を通る姿が目撃されている。
ハジメを襲った奴等の繋がりや素顔までは分からなかったけど、連中は最近、私達を見張っていたみたいなの。
ケイ、五木って子から情報を貰ってなかった? ヤマト以外にも不穏な不良グループがいるって」
「そういえば、言っていたな。利二が日賀野チーム以外にも不穏な動きをしている不良がいるから気を付けろって。
けどそれは随分前の話だしなぁ……ヨウに報告はしたけど、それっきりだし。まさかその不良グループが?」
「可能性は大だと思うよ」
弥生は力強く相槌を打って、チームの中心人物のヨウとシズを見つめる。
これが自分の仕入れてきた情報だと言わんばかりの強い光を眼に宿している弥生は、決定的に一人、素性を暴いた輩がいるとブレザーのポケットから一枚の写真を地面に勢いよく叩きつけた。
その動作に誰もが怖じるけど(怖いってもんじゃない! オーラが禍々しい!)、弥生は不敵な笑みを漏らして見つけてやったもんねと息遣いを荒々しくする。
「あはは、あははははははっ! この女がハジメに近付いた奴! 私、頑張って見つけちゃったもんね! 女の怒りは怖いんだよ!
なにさ、この女、胸はでかいくせして、化粧がケバイケバイ! 厚化粧女め。ハジメの仇ぜぇえったい取ってやるもんね! この手で一発、絶対かますんで夜露死苦リーダー!」
「お……おう。頑張って見つけたな。お手柄だぞ弥生」
弥生怖ぇ……ヨウの心の声が弥生を除く俺等にはバッチシ聞こえた。
同感です兄貴、マジで怖いよ。弥生。
見つけたと高らかに笑う我等が情報係りさん、ものすげぇ怖いっす。
弥生さん、弥生さんやい。
これはもはや女の怒りじゃなく、女の執念で犯人を焙り出してきただろ。
十中八九、ハジメと一緒にいた女を探し出すために奔走してただろ。
学校をサボってまで……頼りになるけど、女って怖っ! 怒らせると真面目に怖っ! 女の執念に恐ろしさを抱いて、思わず背筋が凍るんだけど!
やや弥生に怖じながら、俺は彼女が叩きつけた写真を拝見してみることにした。
ハジメと同じようにシルバーに染まった髪、一つに束ねてある長髪は腰辺りまで伸びている。
お洒落さんなのか化粧は濃いめ、顔立ちは可愛いと思う……それに胸がでかいな。ほんと。Dカップはありそう。
浮気じゃないぞ。
これは一般的見解だからな! 俺にはココロがいる!
見惚れているわけじゃなく、女の一般的見解を心中で述べているだけだからな!
それにさ、仕方が無いだろ、胸を見るのは。男のサガって奴だ。
うむ、形は良いと思われまする。
あ、ほら、俺以外の男達も「胸でけぇやべぇ」ヨウ、「何カップだろ」モト、「……マシュマロ」シズ、「ボインっスね」キヨタ、「巨乳は嫌いじゃないぴょん」ワタルさん等など反応をしている。
その他女の子達の反応が白けている気がするけど仕方が無いんだ。
男のサガでどーしても見ちまうんだよ、胸。
巨乳スキーじゃないけど、見ちまうんだよ。