青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「男共―――ッ!」
弥生は地団太を踏んで胸を見てる男達を一喝。
こいつがハジメを弄んだのに、なんで胸ばっかり見ているんだと怒声を張ってきた。
フルフルと握り拳を作ってくる弥生の怒りに、男の俺等は情けなく揃いも揃って両手を合わせた。
だから仕方が無いんだって、俺達も男だから! 男のサガってもんがあるんだよ、おっぱい興味あるんだよ!
話を戻し、弥生は改めてこいつがハジメと一緒にいた。弄んだんだと怒りを見せる。
名前もバッチリ入手してきた。
そう意気込む弥生が名前を紡ぐ。
「ふ……古渡(ふるわたり)……さん?」
否、弥生が名前を教えてくれる前に、ココロが名前を紡ぐ。
まさかココロが彼女の名前を知っているなんて、しかも相手の名を口にするなんて思わなくて、一同は目を削いで彼女を凝視。
でも一番凝視していたのはココロだった。
写真を凝視して、相手の顔を確かめる彼女は見る見る血の気をなくしていく。
確信を持ったのか、ココロは古渡って女の写真から急いで目を背いた。
目に見えるほど震え始める彼女を案じた響子さんが、そっと声を掛けた直後、
「吐きそうです……」
ココロは嘔吐を訴えた。
吐 き そ う ?
それってもしかして、カウントダウン入っ「う゛ぇっ」ちょぉおお、タンマタンマタンマ! ココロっ、タンマ! 後数十秒タンマ!
ココロの訴えに、チーム内は大慌て。
倉庫内で吐かれちゃ困るから、急いで響子さんはココロを連れて倉庫の外へ。
弥生も持参していたビニール袋、そしてミネラルウォーターの入ったペットボトルを片手に二人の後を追う。
俺もついて行きたかったけど、幾ら彼氏彼女とかいえ、そういう姿を見せたくないと分かってたから(俺もそういう姿は見せたくないしな)、大人しく中で待機。
でも彼女が心配だからあっちへうろうろ、こっちへうろうろ、そわそわしながら帰りを待っていた。
仲間内に大人しく座ってろと注意されたのだけれど、居ても立ってもいられず、倉庫内をうーろうろ。ゼンッゼン落ち着かなかった。
あー遅い。
いや時間の経過が遅いのかもしれない。
大丈夫かなココロ。
写真を見た途端の、あの顔色の変えよう……尋常じゃなかった。
もしかしてココロは古渡という女と何かあったんじゃ。
それもココロの過去の傷と直結に結び付く相手なのかもしれない。
小中時代は苛められていたと言っていたし。
何か関係のある人物なのかもしれない。
それにしても遅いなぁ。
「遅いなぁ……大丈夫かな」
「ケイ。疲れるぞ。座っとけって」
モトに言われても気持ちは落ち着かない。俺の足は意識に反してあっちへこっちへ動く。
そうしてあっちこっち足を動かして待っていると、ようやく弥生が戻って来る。
弥生だけ戻って来たってことは、まだ響子さんとココロは外、なのかなぁ?
「ケイ」
入って来るや否や、ご指名してくる弥生は俺の腕を取って、ちょっと来てくれるよう頼んできた。
「ココロ、体調の方は落ち着きを取り戻したんだけど。気が動転しているの。ケイが傍にいてあげて。私や響子じゃろくに話も聞こうとしないの。すっごく自己嫌悪しちゃって……」
「自己嫌悪?」
「うん。お願いケイ。ココロを落ち着かせてあげて」
「ケイ、行ってやれ。こっちはこっちで話を進めておくから」
ヨウの後押しもあり、俺は弥生と共に倉庫の外へと出た。