青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
呆気に取られていたココロが軽く赤面するのを見て、我に返った俺も大いに赤面。
おぉおおっ、許される気がすると思った数秒前の俺乙!
なんて大胆なことをしたんでごぜーましょうか!
女の子に、で、でこちゅーとか!
でこちゅーとかっ、俺がやるって絵にもなんねぇ!
下書きどころか構図にすらなんねぇ!
嫌がられなかっただけマシかもしんねぇけどマジ、ないって俺。
ちょっとばかし自己嫌悪しつつも、
「よし行こう。皆、待っている」
俺はココロに声を掛けて行動開始。
彼女を膝から退かして、立ち上が……ココロが動いてくれない。ちっとも動いてくれない。膝から退いてくれない。
ココロさん、お膝から退いてくれないと俺は立ち上がれないんですが。
もしかして怒った? 怒っちゃった? やっぱしこういうのは突然やるべきじゃないよな! うんっ、ごめんココロ!
これは謝らなければいけない、そう思った俺が口を開く前に、ココロが俺のブレザーの裾を握り締める。
あーとかうーとか唸るココロは、
「……で……す」
何やら発言。
残念なことに声が小さ過ぎて聞こえない。
さっきと同じパターンだ。
「ん?」俺は耳を近付けて、もっかい言ってくれるように頼む。
するとココロはギュッと裾を握り締めて「これじゃヤです」不満を訴えてきた。
これじゃヤです。
これじゃヤです。
これじゃヤです……?
思考回路がフル活動するんだけど、「これじゃヤです」の意味が俺にはサッパリ……いや薄々分かっているけど、まさかそんな……まさかなぁ……色々混乱に陥っている。
「そ……それともケイさん……や……やっぱり胸ある女性の方が嬉しいですか?」
ポクポクポク、ちーん。
なんて言った?
ココロ。ちょ、この子ったらぁ、ますます俺を混乱に落とす!
もう、俺の思考回路をショートさせたいんっすかね!
「……はい? なんでそこでそうなって胸が出てくるんデスカ、ココロサン」
「だ、だ、だってさっきは気が動転していましたけど、ケイさん、ふ、ふ、古渡さんの胸……う゛ー私、小さいですもんっ。ぺったんこですもん」
そそそそそ、そりゃあ、見てしまうのは男のサガってもんだけど。
だからって別に俺は胸重視で女の子を選んでいるわけじゃないぞ!
てか、気が動転していても、そこはしっかりと見てくれているのねココロさん! スルーして欲しかったんだけどな!
「違うって!」
全力否定する俺に、
「だって」
腫れた顔で脹れ面を作ってみせるココロ。
唇を尖らせて、「期待したんです」小声も小声で俺を見つめてきた。
何を期待していたのか、言わずとも分かる。分かっちまった。
――おかげで折角忘れようとしていた触れたい気持ちが、無遠慮な言葉によって目を覚まそうとする。