青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



嗚呼……畜生、可愛い娘さんを貰ったと同時に恐ろしい姑さんを頂いた気分。響子さんが怖過ぎる。


てか、寝取られても、それって俺が悪いんですかね?

そんなことしないしされないけど、仮にそうなったら俺が悪いんですかね?!


無理やり襲われても俺が悪いんですかね?!


ズーンと落ち込む俺は、「キヨタぁ……」思わず近くにいた弟分にオイオイ泣きつく。


「どーしようキヨタ。俺、近々男じゃなくなるかもしれない……女になっちまう」

「け、ケイさん」


「ううっ、俺……男じゃなくなったら圭子って改名するから! 姉分になったらごめんな。その時はすっぱり弟分をやめてくれていいから」


「な、何を言うんっスか! 俺っち、ケイさんの性別が変わろうと弟分には変わらないですから!
ケイさんに何処までもついて行きますっス! ケイさんに対する尊敬心は誰にも負けないっスよ! 性別で左右されると思ったら大間違いっス!」


こいつ、兄分泣かせなことを。

ポンッと両肩に手を置くキヨタは、垢抜けた笑顔を見せてくる。


「俺っちはケイさんの弟分っス。忘れないで下さい。俺っちは男であろうと、女であろうと、ケイさんの弟分なんっス。どんなことがあってもついて行くっス」


「キヨタ……お前……お前って奴は……めちゃくちゃイイ奴だなっ! 俺はお前を一生弟分として大事にしていくよ!」


「光栄っス! ケイさんッ、マイベスト兄貴ィ!」


ガッチリ男と友情の抱擁。


キモイ?


馬鹿を言うんじゃない。


男の友情を確かめる抱擁の何が悪い。女同士だって抱擁するだろーよ。

男同士だって友情を確かめ合うためにするんでい!


むさ苦しい?


馬鹿、甲子園とかを観てみろ。


勝った時、負けた時、どっちにしても男同士で抱擁して友情を確かめ合うだろうよ! これは友情の証だ!


ヨウ達が呆れ返っているけれど、何処吹く風で俺達はアッツーく抱擁。田山も強くなったな、俺も不良とこんなことが出来るようになったんだぜ!

レベルがツーランクくらい上がったよ!

最初こそキヨタと上手く付き合っていけるか分からなかったけど……くぅう友情に大乾杯!


「……おいテメェ等、いつまでそうしておくつも……っおいモト。そんな目で見ても、俺はやらねぇからな」

「え゛?」


俺等、兄分弟分の友情抱擁に感化されてスタンバっていたモト、ヨウに一蹴されてあえなく撃沈。どんまいだ、モト。


でもお前の敬愛はいつだってヨウに(多分)伝わっている筈だから! 落ち込むことなかれだぞ!




―――ガシャンッ!




馬鹿馬鹿しく他愛もないやり取りプラス、真面目な集会を打ち切る騒音。

倉庫内に響く窓ガラスの割れる音に俺達は弾かれたように出入り口を見た。


そこには数台のバイクと、鉄パイプを持った見知らぬ不良達。


俺達の反応を待たず、バイクは無造作に中に飛び込んで来た。奇襲だ。

何処のどなた様達か分からないけど、不良達が奇襲を仕掛けてきやがった!



数台のバイク達の姿に驚く暇もない。



俺達は急いで地を蹴ると、四方八方に散らばって飛び込んでくるバイクから逃げた。マジでさ、バイク対人間とかないだろ。


どっちが勝つか容易に判断できるだと……まあ、『エリア戦争』で俺達もバイクを使ったけど、これはあんまりだろ! 予告も何もなしなんだぜ?!


広い倉庫じゃないけど、バイク達が走るには十分スペースのある俺等のたむろ場。

喧騒な音を倉庫内に満たすバイク達は一斉にターゲットを定めた。


ターゲットはキヨタだ。

揃いも揃ってキヨタを追い駆けている。


さすがに合気道の経験を持っているキヨタでも機械相手じゃ敵うわけがない。


「俺っちモテるっスね!」


おどけては見せているけど、声に余裕はない。

「キヨタ!」

誰よりも先にモトが親友に向かって駆けた。

間一髪、轢かれそうになるキヨタを、モトが横から押し倒すことで最悪の事態は免れる。


だけど別のバイクが来て二人は大ピンチ。

上体を起こす猶予もなさそうだ。


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