青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「いいか、ケイ。団体戦の喧嘩ってのは、個人戦の喧嘩と違って単に腕っ節があるだけじゃ勝てねぇ。
戦法、判断力、機転、そういったものが必要不可欠。
力も当然必要だが、他人にはない長けた能力ってのは団体戦の喧嘩じゃ超有利ってわけだ。
俺サマやヨウ、シズ、響子、モト、タコ沢はどちらかと言えば肉体派。
更に向こうチームには中学時代の俺サマ等を知っているから、ある程度能力を把握している。
とにもかくにも力中心のパーソンだ。
力には力で対抗すればいい、向こうにとって力のパーソンはさほど怖くはねぇ。
問題は個性派パーソンだ。
これは単に力で対抗すりゃいいって話じゃねえ。
何せ、他人にはない長けた能力を持っている。
俺サマ等チームの中で特に個性派っつーのはキヨタ、ケイ、ハジメ。この三人に絞られる。
合気道を習っていたキヨタは向こうチームにとって“力”で簡単に対抗できる相手じゃないから厄介。
ケイは土地勘とチャリの腕に長けている、間接的な喧嘩の場面で活躍するから厄介。
んで、一時離脱したハジメは誰より機転が利いていた。
頭脳派は団体戦の喧嘩をするに当たっていっちゃん厄介な存在。
だから向こうはハジメを真っ先に狙って潰したんじゃないかって俺サマは思っている」
それがハジメが潰された真の理由なのか。
ワタルさんの説明に、つい眉を寄せてしまう。
「今、この状況下で一番危ないのはキヨタだ。あいつの腕っ節はそんじょそこらの不良じゃ太刀打ちできねぇ。何が何でも潰したいんだろ。
こっちとしてもキヨタを失うのは痛手も痛手だ。あいつほど腕の立つ奴はいないしな。あいつが抜けたらチームの戦力はがた落ちだ」
「じゃあ、あいつ等はキヨタを潰すためにッ」
「おーっとケイ。お前もチョー危ないんだぜ? 言っただろ、チームの個性派はキヨタ、ケイ、ハジメ。現にこいつ等、お前を狙ってフェンスを乗り越えてきやがった。倉庫の外に避難することを見越して。モテるねぇ、羨ましいぜ!」
そ、そんなに危険な立ち位置にいるのかよ俺!
向こうが個性派パーソンに抜擢してくれたのは(ちっとも嬉しくないけど)嬉しい、でもこんな風に追っ駆けさんが出てきてくれるなら是非とも抜擢して欲しくなかったなぁ!
どうしてくれるの、この追っ駆けさん!
全員俺のファンだよ! アンチファンだよ!
「アリエナイ」
嘆く俺に、
「個性派モテるからなぁ」
一笑してワタルさんは最後の不良を伸す。
取り敢えず、一安心ってところかな。俺はワタルさんに歩んで助けてくれた礼を告げた。
ほんっと俺ってこういう場面じゃ使えないよな。
個性派も、もう少し力をつけないと、チャリと土地勘が長けてい「ガンッ!」
――衝撃と共に目の前が真っ白に染まる。あれ、どうしたんだろ。俺。
いきなり状況判断ができな……「ケイ!」ワタルさんにしては珍しく焦る声。そして弥生、ココロの悲鳴。
あ、やっべぇっ、これってもしかして……気を失う感じなんじゃ。
考える余裕は無い。
崩れるように前に倒れて、俺は意識を飛ばした。皆の声を聞きながら。