青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



閑話休題。


俺の思考回路が完全に回り、やり取りに落ち着きを取り戻した頃、ヨウとココロは現状を説明をしてくれた。


曰く、俺は情けないことに喪心していたらしい。


なんでもワタルさんに伸された筈の不良さんがゾンビのように蘇り、俺は隙を突かれて木材で頭をかち割られたそうな。


目からお星様を飛び出した俺は目の前が真っ白になってバタンキュー。

気絶の道にウェルカムしていたという。



俺が気を失った後、ワタルさんがすぐに仇を取ってくれた。

ココロ達に悪意のある拳は伸びなかったという。


また倉庫内で喧嘩をおっ始めていたヨウ達は、どうにかバイクに乗った不良ライダーに勝利。


そしてまた刺客が来るかもしれないと、すぐさま場所を移動を決断したそうだ。


どうやら浅倉さん達に頼んでたむろ場に避難したらしい。

俺はワタルさんに背負われて此処までやって来たらしい。


いやはや、申し訳ない思いで一杯だ。


失神した俺が寝かされていた場所はビリヤード室奥にある休憩室。


ビリヤード台は一つも見当たらない。

代わりに部屋にはソファーや丸テーブル、不良達が荷物置き場にしているのか、四隅に通学鞄が放置されていた。


「俺……どれくらい気を失っていたんだ?」


気だるい上体を起こし、タオルで巻いたアイスノンを殴られた患部に当てながら、二人に眠っていた時間を尋ねる。


「30分くらいでしょうか?」


ココロは、なかなか俺が目を覚まさなくて心配したと蚊の鳴くような声で呟いた。


更に目を覚ました俺が、ワケの分からんことを口走るもんだから余計心配したとポツリポツリ。本当に病院に行かなくて大丈夫かと聞いてくる始末。


あれは全部、殴られたことが悪い。


だから二人とも、そんな俺を哀れむような目で見ないでくれ! ほんっと大丈夫だから! ちょっと混乱していただけだから!


話を変えるように、俺は皆は隣室にいるのかと質問。


するとヨウは軽く溜息をついて、全員いると返答する。溜息の意味は良からぬことが起きたことを指している。


何か遭ったのかと尋ねれば、ヨウがキヨタが負傷したこと、そしてキヨタが向こうチームの標的にされていることを教えてくれた。


向こうチームとキヨタに直接的な因縁はないけど、彼は合気道を心得ているチームイチ手腕のある不良。


相手の力を恐れ向こうチームはキヨタ潰しに本腰を入れ始めたようだ。こっちに避難する間も、何回か不良に襲われたのだと舎兄は語る。


しかも狙いはキヨタばっかり。

執拗な攻撃にキヨタはついに肩を負傷。幸い軽い怪我で済んだみたいだけど、キヨタは危ない立ち位置にいるみたいだ。



「そっか。じゃあキヨタはチームで一番……危ない立場にいるんだな?」


「ああ。あいつは合気道で全国に行っているからな。向こうも懸念しているんだろ。逆を言えば、キヨタさえいなくなれば……俺等の優位は一気に崩れる。
ハジメに引き続き、キヨタがいなくなるのはチームとして痛手だ。暫くは単独行動を控えさせる。常に警戒心を持たせるようにするつもりだ」



それがいいだろうな。

幾ら強いキヨタでも、数には敵わないだろう。肩を負傷しちまったなら尚更だ。

ヨウの意見に相槌を打つと「ケイ、テメェもだぞ」舎兄が硬い表情で見据えてくる。


眼光を鋭くする彼は、今回の怪我は俺にも半分責任があると指摘。厳しい口調で物申してくる。


「常に警戒心を抱いとけ。今回は半分、テメェの甘さに問題がある。最後まで周りをしかと見とけ。簡単にヤラれているんじゃねえぞ、馬鹿が! ざけるなよ!」


「よ、ヨウ……?」


なんでそんなに怒って……思った瞬間、勢いよく胸倉を掴まれた。


ちょ、目が怖い。怖いんだけど兄貴!


どーしてそんなに怒っているんだよ?!


久しぶりにヨウへの不良に対する恐怖が込み上げてきたんだけど!

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