青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「ゆっくり休んでくださいね」
微笑を向けてくれるココロを見上げて、俺は目尻を下げる。
「もしかして……ずっと傍にいてくれた?」
彼女は頬を紅潮させて「心配ですから」小声も小声でボソボソ。
うっわぁ、どーしよう。
俺は舎兄にも彼女にも目いっぱい愛されちゃっているようだ。
きっと仲間にも心配を掛けただろうし……うん、俺の居場所は此処なんだと思う。
不良のチームに身を置いている平凡くんにとって荒川チームはかけがえのない居場所のようだ。
「サンキュな」
傍にいてくれたことを感謝すると、「いいえ」どうってことないと、彼女ははにかみを見せてくる。照れ隠しのように何か飲み物はいるかと聞いてきた。
実情、ちょっとだけ喉は渇いてたけど、俺は気にしないことにした。
だってほら、彼女には一分一秒傍にいて欲しいからさ。
俺はスツールに腰掛けているココロに、頬を掻いてみせながら照れ隠し。
「何もいらないから……あー……もうちょいこのままがいい」
意味深に言ったおかげで、ココロも察してくれたんだろう。
あどけない笑顔を浮かべて大きく頷いてくれた。
その笑顔が俺にとって、ほんの少し眩しいものに思える。
ほんっと恋は盲目だよなぁ。ぜーんぶが良く見える。全部、ぜーんぶさ。
こうしてもう暫く休憩を挟み、体と頭を労わることにした俺はヨウがこっちに来るまで一眠り。
折角二人っきりになれたんだしココロと沢山会話をしたかったけれど(最初の方はしていたけれど)、いつでも体を動かせるよう、体力を回復させておきたかったからオフモード。
どんな事が遭っても動けるように日賀野達との喧嘩に備えて充電。
付け足して言うと、まだちょい頭が痛かったから、それを癒す意味でもおやすみなさいモードに入っていた。
ココロも分かってくれていたんだと思う。
寝る俺に何を言うわけでもなく(寧ろ“休んで下さい”って顔に書いてあった)、始終スツールに腰掛けて、物静かに傍にいてくれた。
何か遭った時は起こすから、そう一言補足して。
おかげさまで気兼ねなくうたた寝に入ることができた俺は、夢路を行ったり来たり。軽く意識を飛ばして時間に身を委ねていた。
「ケイさん、起きれます?」
不意に意識が浮上、彼女の声で俺は目を覚ます。
あーよく寝た気分。
頭はやっぱしまだ重いし痛い。
けど幾分マシになった気がする。
寝起きの俺だけど、「起きれる」どうにか返事をして上体を起こした。
ズキッと頭部に痛みが走るけど、無視して欠伸を一つ。
ほんと、うたた寝とはいえよく寝た気分。今何時だろう。