青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「田山、完全に寝惚け顔だぞ。顔でも洗ってきたらどうだ?」
笑声交じりの聞きなれた声。
俺は仲間内の不良達に“ケイ”と呼ばれている。
“田山”と呼ぶ奴は身内にいない。
ということは……首を回して視線を投げれば、部屋にはチームメート全員。
それに向こうのチームリーダーの浅倉さん、副の涼さん、新旧舎弟お二人。
後は……わぁお、愛しのマイフレンドジミニャーノ利二くんじゃないですか!
浅倉さん達のたむろ場で、まさか利二に会えるなんて!
「利二!」
体のことなんてそっちのけでソファーから飛び下りると、地味友の下に駆けた。
実は超心配をしていたんだ。
俺達と協定を結んでいる浅倉さん達が日賀野達に襲われたと聞いてたからさ(正しくは日賀野達と協定を結んでいる不良チーム何だけどさ)。
もしかしたら、間接的に関わりを持っている利二も危ない目に遭っているんじゃないかって。
さっきヨウが電話をしても出なかったと言っていたから。
また不安で……嗚呼、良かった。
その様子だと何事も無かったみたいだな。
何で此処にいるのか分からないけど、取り敢えず……無事で良かった。本当に良かった。
既に利二もある程度事情を知っているのか、安堵の息をつく俺に、「心配性だな」と肩に手を置いてきた。
うるせぇやい。
心配性のお前には死んだって言われたくない台詞だぞ。
「まったくお前は……また無理して怪我をしたのか? 失神していると聞いて度肝を抜いたぞ」
「いやぁこれは……あー……お、俺の……甘さのせいかな。はははは」
今グサッと舎兄から鋭い視線を飛ばされたんだけど。怖い、兄貴、怖いよ。
でもでもでも俺は猛省したって!
田山猛省しました!
甘かった俺がわるぅございました!
ゴミンチャーイ!
誤魔化し笑いを浮かべながら、
「利二はどうして此処にいるんだ?」
質問を投げ掛ける。
すると利二は一変して暗い顔を作った。
なんでそんな顔を……おま、もしかして何かあったんじゃ……! 心配する俺を余所に地味友は重々しく口を開いた。
「今日……バイト自体はなかったんだが、シフトを出しにコンビニへ行ったんだ。ああ、荒川さんが電話をくれた時、自分は店長と話をしていたから出られなかっただけだ。一応説明しておくぞ」
うんうんうん、俺は相槌を打つ。それで?
「シフトを出し、帰宅しようとコンビニの裏口から出たその瞬間……なんとびっくり。見知らぬ不良数人が待ち構えていた」
え、それじゃあやっぱり、日賀野達は利二にも目を付けて。
「驚く間もなく『お前が五木利二か』と名指しされ、肯定すれば『ちょっと面を貸せ』と言われ、数人相手じゃ絶対に逃げられないと思った自分は……渋々と後について此処までやって来たという」
……ん? 此処に連れて来られ?
「つまり説明もされず、事情も分からず不良にお迎えされたんだ、自分は。
更にワケも分からず此処に踏み込んでみれば、また不良の群。もはや人生此処までかと最期を悟ったくらいだ」
あー利二さん、ちょ、涙目というかなんと言いますか。
クールツッコミ系ジミニャーノの面影が薄れていると言いますか。
フルフルと利二は軽く体を震わせて、俺に力説する。