青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「荒川さんが此処にいたから、なんとなく事情を察し、救いの光を自力で見出せた気がしたが。
それにしたって田山。
自分もな、強い心を持っているわけじゃないんだ。
せめて一言、一言ッ、メールでもいいから不良が迎えに来るなら来るとっ……どれだけ恐怖と孤独を噛み締めたと。自分も強い人間じゃないんだ、田山。所詮はジミニャーノなんだ」
「とととと、利二、今度奢ってやるから、な……泣くな! いや気持ちは分かる。分かるぞ! すこぶる分かるぞ!」
利二においお前、もしかして不良がお迎えに来ることを知っていたんじゃないか、と恨めしい眼を飛ばされる。
しかし、俺は知らなかった!
バッタンキューしていたからな! 痛い思いをしていたんだからな!
追々話を聞けば、ヨウが浅倉さん達に頼んで利二がコンビニにいるかどうか、もしいたら此処に連れて来て欲しいって頼んだみたいだ。
なあヨウ、お前もしくは仲間内が利二の下に行ってやれば良かったんじゃないか。
そうすれば利二、多少なりとも恐怖を感じなかったと……ヨウはヨウなりに、日賀野達の手から利二を守ろうとしてくれたみたいだけど利二、ちょいとトラウマになっているみたいだぞ。
うん、俺が利二だったら絶対トラウマになっていると思うよ。
コンビニの裏口を開けることが怖くなったと思う。
扉を開けたら、見知らぬ不良の群でした、なんてぜってぇトラウマだろ!
珍しくも涙目になっている利二に、「お前がんばった」慰めの言葉を掛けてやる。
「何がいい?」
奢るからと慰める俺に、
「気分は肉だ」
と言われたから、今度利二に肉を奢ることが決定された。
ちゃっかし高いものをねだってきやがって。
「ケイ。五木にはこれから暫く、チームに身を置いてもらうことになっている」
俺達のやり取りを打ち切るようにヨウが会話に加担する。
「え?」
嘘だろ、目を丸くする俺は思わず利二を見やる。
「一時的だ」
利二は苦笑い。
日賀野達のやり口と身の安全を考えて、ヨウからチームに身を置いとけと助言されたらしい。
直接的な喧嘩に関わることはないけど、俺等に関わっている以上、自己防衛策としてチームに身を置いとけ……だとか。
そうだな間接的に俺達と関わっちまっているし、多分向こうも情報通だから利二のことは知っているだろう。
日賀野なんて利二と対面しているしな。
顔を覚えていないとうそぶいているようで、実は覚えていそうだから怖い。
単独にさせるよりは、チームに身を置いて貰った方が俺的にも安心かも。
「五木ちゃーん、チームに入ればイイジャンケン」
間接的じゃなくて、直接的な仲間になればいいのに。
尤もらしいワタルさんの意見に、俺は複雑な心境を抱く。
そりゃ利二がチームに入ってくれたら嬉しいけど……喧嘩も多いし、怪我をすることも恐怖も多々。あんまオススメしたくないや。
なるべくなら不良と関わって欲しくない。
フツーのジミニャーノでいて欲しい。
複雑だと思っている俺を余所に、「入るか?」ヨウは利二を勧誘する。
そしたら利二は驚くほど綺麗に微笑を向けてポツリ。
「自分、田山に手を貸しているだけであってチームに手を貸しているわけではありません。
それに以前も言いましたが、荒川さん。
自分、貴方を田山の舎兄だと一切認めていませんので、きっと自分を正式にチームに置いても内輪揉めを起こすと思いますよ?
丁重にお断りします。
貴方がもう少し、知恵のある頭の使う人ならば舎兄と認めないこともありませんけどね」
え゛? ちょ、利二……?
「五木。あ、相変わらずテメェの言葉はキチィんだけど……胸が抉られた気分」
「本当のことです」
………あのー…と、と、利二くん。
アータって子はぁ、どーしていきなり悪い子になっちゃったんだい!