青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



お前は空気の読めるジミニャーノだろ!

不良相手に、しかもヨウ相手にそんな発言したらぁっ、うわぁあああっ、ほらぁああ! ヨウ信者のモトが怒り心頭している! しているからぁ!


利二くん謝りなさいっ、今すぐ謝りなさいっ! 不良相手に果敢に喧嘩を売るもんじゃ……モトが吠え始めたぁあ!


「五木ィイイアンタかぁああ! ヨウさんに舎兄失格発言した奴! 何様だぁあ!」
 
「べつに(恐ろしい存在ではあるが)不良が特別偉いわけではないし、これは個々人の意見だ。自分は現在進行形で舎兄の存在を認めていない。文句は言わせない」


すっげぇドライに返答する利二だけど、表情はいたって柔らかい。


内心は分からないけど、表向きはモトの吠えに怖じている様子も何も無い。


それがモトの怒りを煽っているんだけど、利二は気にする事無く微笑を零したまま。


「ほら内輪揉めを起こすでしょう?」


ヨウに目尻を下げて、やめとくよう助言。自分も入るつもりはないと付け足す。


「入ってくんな!」


モトはムキになってこっちだって願い下げだって声音を張っていた。

よほどヨウを侮辱されて悔しかったらしい。


憤りを見せている。


あーあーあー……空気がちょっと悪くなっちゃって。


利二、お前らしくないぞ。

何かあったのか? やけに子供っぽい一面を見た気がするけど。


「んー」


断られたヨウは納得しているようなしていないような表情を作りつつ、利二の気持ちを尊重して承諾。結局仮チームメートの称号を得ることになった。


俺達の軽い内輪揉めも程々に、ヨウは俺達チームメートと浅倉さん達チームに呼び掛けて集会を開始。

日賀野達の行動の過激化。

そして対策。

反撃について皆の意見を求めつつ、話し合いを進めていった。


結果、出した結論と俺達の起こす行動は一つ。


俺達自身が、直接向こうのたむろ場に乗り込んで喧嘩をおっ始める。んで決着をつける。


以上! 終わり!


シンプル・イズ・ベスト!


もはや作戦も何もねぇや。


猪突猛進の勢いで向こうのたむろ場に乗り込むんだってよ。


目には目を歯に歯をだってよ。ありえねぇ!


なんでまたそんな直球勝負を打ち出しちまったんだよリーダー!

いやリーダーが直球型不良だから仕方が無いかもしれないけど。作戦っつーより、決意表明に近いぞ。これ。


そんなリーダー曰く、浅倉さん達に協力してもらって、邪魔立てするであろう日賀野達が結んでいる協定チームは潰してもらうんだと。


浅倉さんところは人数も多いし、再結成した結束あるチーム。


きっと向こうの協定を潰すだけの力量は持っている。


俺達は日賀野達一本に絞って、周囲の雑魚チームは浅倉さん達に任せたいというのがリーダーの意見だ。異議申し立てはあるかと聞かれて、何も意見できず、意見も出ず、この作戦(といえるかどうか分からなかったけど)でいくことに決めた。



そうそう、利二情報で日賀野達のこんな内情を耳にする。



「向こうの仲間内の何人かが負傷しているようなんです。その内の一人は魚住って名前だったような……喧嘩をしたらしいですよ」


この情報に一番反応を見せたのはワタルさんだった。


「あのアキラが? 手腕はある方なのに」


なにより何で自分以外の奴から怪我を負っているんだと彼は不機嫌に鼻を鳴らしていた。

自分で仕留めると決めているみたいだからこそ、不快に思ったらしい。


不機嫌とは言えば、モトは完全に利二に敵意を持っちゃって、利二の情報に「本当か?」一々突っ掛かっていた。


いっちゃん面倒な奴に敵意持たれちゃったな、お前……でも利二はなんでヨウにあんなこと言ったんだろう。


ヨウはさして気にしてないようだけど(「前にも言われたしな」と言っていたし)、だけど俺は利二をよく知っているからこそ戸惑っている。


あいつは無闇に人を傷付けたり、チームを掻き回したりするような奴じゃないのに。


まさか内輪揉めにワザと持っていった? ……わっかんねぇな、利二の気持ち。

本人は本人で平然とチームにいるけど、モトに敵意を持たれてぜってぇ内心は超ビビッているだろう。

こうなったら聞いてみようかなぁ、本人に。


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