青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



うんぬん考えながら、集会を終えた俺は利二に声を掛けることにした。

集会を終えた利二はしきりにビリヤード台に興味を示している。


「やってみたいな」


台を興味津々に観察していた。

ビリヤードに興味があるのかもしれない。

俺が声を掛けたことによって顔を上げてくる。


「どうした田山。表情が険しいが……まさかまだ頭が痛いか? 一応頭痛薬は持っているが……外傷だしな、お前の場合」

「まあ利二ちゃん、用意がいいのね! まるでおにゃのこみたい。いいお嫁さんになれるわぁ。利二ちゃんがおにゃのこなら、俺、お嫁さんに貰いたい。結婚してくれ!」


「断る。自分は女が好きだ」

「……じゃねぇ! 乗らすな!」


「完全に今のは一人漫才だろ? 田山」


「いや確かにそれはそうだけど……なあ利二、さっきはどうしたよ。なんか利二らしくなかったけど」


すると利二は「さあな」おどけ口調で笑う。

えー……そこではぐらかしちまうの? お前。俺がこんなにも心配をしているのに。

大きな不満を抱く俺は、利二にチームに入りたくなかったのかと率直に聞く。

チームの勧誘を断るため口実だったらのなら、ちとやり過ぎだと思うけど。

ストレートに言っても利二は笑みを深めるだけ。

誤魔化すように、


「お前みたいになりたくないだけだ」


肩を竦めてビリヤード台に乗った。お行儀が悪いぜ、利二!  


「舎兄を認めていないのは本当だしな。自分は荒川を認めていない」

「実力はスゲェと思うけど。少なくとも俺よりかは」


「いや、実力の問題じゃない。器の問題だ。そしてこれは自分自身の問題。
田山に言われようと、誰に言われようと、自分自身で消化できるまで舎兄は認めないと決めているんだ。
チームの頭としては最高だと思うがな。

舎兄としては……それに………チームに入ったら――堪えられる自信もないしな。自分はモトと呼ばれた中坊のように、器が大きいわけじゃない。心の狭い人間だ」


何に堪えられる自信がないって?

声が小さくて聞こえなかったんだけど。それにモトって……なんでそこでモトが。


「ワンモア利二」


頼む俺に、やっぱり何でもないと利二は一笑して台から飛び下りた。

この話は仕舞いだと俺に背を向けて、さっさと隣室に向かう。

隣室に置いている鞄の中の飲み物を取りに行ったみたいだ。


俺も追い駆けようとしたんだけど、その前にヨウがちょい待ちと止めてきた。


どうやら俺等のやり取りを盗み見てたらしい。



代わりにモトが利二の背を追い駆けた。



え、ちょ、なんでモトが……それこそ止めるべきじゃ。懸念する俺に対し、ヨウは大丈夫だと肩を叩いて「少し話をしようぜ」外に誘ってくる。


すごく迷ったし、できれば二人の下に行きたかったけどヨウが大丈夫だと言ったし、意味深に誘ってくるんだ。断るわけにもいかない。


俺はヨウの後に続いた。

ビリヤード室を出ると浅倉さん達のたむろ場を後にして、二人で薄暗く狭い階段に腰掛ける。

階段向こうに見える、吹き抜けた外の景色はすっかり夜景と化していた。


時刻は九時を過ぎている。

スッカリ空は暮夜顔だ。

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