青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「まあ……一番は俺がテメェを疑ったのが悪かったと思うけどな。
ケイ、俺さ、最近よく考えるんだけどよ。決戦目前にあれだけど、誰かと繋がるって難しいな」
こうやって人を理解するって難しい。
ヨウはポツリと呟いて夜景を見つめた。
中学時代の分裂事件を懐古しているみたいだ。
あの時、こっちが妥協していたらグループは分裂しなかったのか。他に解決策はなかったのか。
和解という選択肢はなかったのか。
今では不仲だけど、昔は一人を除いては気の置けない奴等だったから(その一人ってのは勿論ヨウと犬猿の仲のアノ不良のこと!)、ヨウ自身、ちょい決戦に思うことがあるみたい。
「迷っているのか?」
心情を尋ねる。
「んにゃ」
ヨウは曖昧に綻んだ。
「迷いなんざあったら、チームを引っ張っていけねぇだろ?
それに……分裂事件がなかったら俺はテメェと関わることもなかった。今が良いのか悪いのか分かんねぇけど、出逢えた仲間には感謝している」
「うっわぁお、兄貴カックイイ。さすがイケメン」
「顔カンケーねぇだろ。
大体な、イケメンにはイケメンなりの苦労があるんだぞ。
例えば女の扱い方。
顔だけでセックスの経験豊富そうとか、女の扱い方に手馴れてそうとか、なんとかかんとか。
あ゛ー俺はンなに女を抱いたことねぇっつーんだ! 下手ってわけじゃねえけど、どーせ俺はヤマトと比べりゃ、女ベタだよ」
「へ? 日賀野って女の扱い方上手いの?」
あら意外、日賀野って女の扱い方上手いんだ。
俺の反応にヨウはムッスリと脹れ面を作る。
「癪だがな癪だがな癪だがな。フツーの顔立ち、んでもってお洒落さんのあいつの方が実情モテるんだよ。女の気持ち、よーく分かってらっしゃる。
なんっつーのかなぁ。
男女問わず、不安な時ほど気持ちを察してやれる気の利いた男っつーの?
帆奈美の時も……ヤマトはあいつの不安な気持ちを察して優しくしてたみてぇだし?
俺は手前で手一杯だったから気付いてやれなかったし?
ヤマトのそういうキザな面には俺も惚れたいぜ。
あー惚れたい。嫉妬だ嫉妬! そっれこそ人生最大の嫉妬だ! あんのキザ男っ、思い出しただけでもムシャクシャするっ~~~ッ!」
「お、お、落ち着けヨウ」
「……イイデスカ、弟くん、顔だけで女の心は射止められねぇ。そんなに女は軽いもんじゃねえよ、OK?
所詮顔は顔で終わるんだよ。
ルックスとか二の次三の次なんだよ。
女に必要なのは自分を分かってくれる、年齢的に落ち着いた男。包容力のある男。
つまり理解者だと俺は思うね。
多分恋愛面じゃ、俺の方がガキだったろうしな。女の不安を気付ける男ほど、イケた男はいねぇと思うぜ?」
自信を失くすとヨウは項垂れる。
あのイケメンが自分の過去の敗北を口にしてくれるなんて不思議な光景だ。
「あいつの前じゃいつも、敗北感バッカ噛み締めていたし。まじアリエネェ……セフレでも女を取られたとか。しかもあのヤマトに取られたとか。人生最大の汚点だ」
「ヨウも人の子だなぁ。負ける時は負けるんだな。なんか安心したよ」
「テメェな、落ち込んでいる兄貴に向ける言葉か? それ」
「んー? 俺はこれでも、兄貴は仲間思いだって知っているから? 恋愛は知らないけど、お前は友情面じゃピカイチだよ。
例えば? ぶっ倒れた舎弟のために酷く動揺してくれたこととか?
いや、そこまで動揺してくれなくても、俺は怪我をしても這ってついて行くから安心しろよ? ははっ、兄貴の友愛を感じたけどさ!」