青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「ヨウ、喧嘩ばかり見て周りを見ない。ヤマトは違う。仲間をよく見る。私のことも見てくれていた。だから私、ヤマトを選ぶ。貴方を切る」


「帆奈美……」


「ヨウのこと、好きだった。でも今は嫌い。貴方は仲間、見ない。自分のことばかり。嫌い。とても嫌い。ヤマトの方が、ずっと好き」


嫌いだと連呼して、帆奈美はヨウに背を向けた。



物言いたげなヨウだったが、帆奈美は気付かない振りをしてヤマトの下へ駆けたのだった。


自分や仲間を見てくれるヤマトの下へ。


胸を締め付けられるような泣きたい気持ちはあったが、涙は露一つ出なかった。  





こうして分裂していったグループは、やがて高校へ進学。

衝突を繰り返し繰り返し、そしてついに決着をつける日がやって来る。




「――荒川達もそろそろ、今日辺りに仕掛けてくるだろうな。ゲームクリアか、ゲームオーバーか、見物だな。取り敢えず帆奈美、起きろ。シャワーを浴びてこい。お姫さん、起きろ。あーあ…起きやしねぇ」




ベッドに寝転んでいたヤマトは、猫のように自分に甘えて擦り寄ってくる帆奈美に溜息。

メンドクセェ女だと呟きつつも、その言葉に毒はなく、


「まだ寝かせとくか」


不慣れな手付きで髪を梳いた。今日は長い日になりそうだと、思いながら。



「――ヤマト達を落とすには今日しかねぇな。今日ですべてを終わらせる。ぜってぇに……行くか。決着をつけに」


ヨウはぺったんこの通学鞄を肩に掛け、自室を出る。


これ以上仲間を犠牲にさせないためにも、ハジメのような事件を無くすためにも、今日という日を最後に対立に終止符を打つ。


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