青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
すると利二は微笑を浮かべて俺の肩に手を置いた。
「今はそんな小さなことを気にしている場合じゃないだろ。お前はお前のやるべきことに集中しろ。チャリくらい、どうにでもなる」
と、と、利二。
お前って男はどーしてそんなに男前なんだい?
俺がおにゃのこなら完全ノックダウンの域だぞ!
なんで君はモテないんだろうな! ……地味っ子だから? カンケーねぇと思うんだけど。
俺だって、こうやって彼女をゲットしているし。ココロをゲットしているし。強調するけど恋人がいますし?!
ははっ、今のはちょっと自慢だぜ!
いいじゃないか、自慢もしたくなるお年頃だ。俺はいま春真っ盛りだぞ。
まあ……だけど残念な事に不良合戦に巻き込まれて春が楽しめていないんだけどさ。いや、キスはしたけど……しちゃたけど……お味はしょっぱい涙味だったですけど。
「(ッ~~~っ! やっぱこういうのって手順があるんだと思うんだ! 嫌ってわけじゃなかったさ! でもなんっつーか、先走った感じがして。
俺ってガッツリくんだっけ? いやん、地味くんもやる時はやるのね。
真面目なほど実はえろっ、認めねぇぞ! 俺は人並みの欲を持っているだけでっ……ああっ、初キスってデートの後じゃなくて良かったのか?!)」
「……田山、お前はまた、自分ワールドに浸って人を蚊帳の外に追い出す。戻って来い。どーせ春の妄想ネバーランドに行っているんだろう? お前の頭は春だからな。羨ましい限りだ」
「ちっ、ちがっ……冬かもしれないだろ! 妄想ティンカーベルが寒い思いしているかもしれねぇじゃん!」
「顔に出やすいんだお前は。どーせ若松のことを考えていたんだろ? ほら、そこで若松がお前の奇怪な行動を不審そうに見ている」
ゲッ、マジかよ?!
膝を折っていた俺は素早く立ち上がって、利二の顎でしゃくる方向を見やる。
いなくね?
ココロ、どっこにもいなくね?
目を点にする俺に、小さな笑声を漏らした利二は「春も春だな」おどけ口調で肩を竦めてきた。
あ、あ、あ、アリエネェお前っ! 騙しやがったな!
「利二っ、お前~~~ッ!」
「お前が勝手に自分ワールドを作るのが悪い。おっと、そう怒るな怒るな。こんなことしてる場合じゃないだろ? チャリの話はどうするんだ」
お前が俺を茶化してきたんだろうよ!
確かにどっちかというと現状は俺に非があるとは思うよ。
先に妄想ネバーランドで妄想田山パンになっていたのは完全に俺だし。
だからって彼女のココロをダシにするのは卑怯ってもんじゃねぇですかい。利二さんよ!
ムッと眉根を寄せている俺に、笑いを押し殺したまま、利二は言葉を上塗り。
「チャリがもし壊れても、奢り一つでチャラにしてやる。その時は奮発して映画を奢ってくれ」
その友情で今の茶化しはチャラにしてやるよ。ジミニャーノ男前め!
「サンキュ」
一変して俺は利二に綻ぶ、世話になりっぱなしだなっと苦笑い。
「馬鹿だな」
利二は目尻を下げて、軽く背中を叩いてきた。
「お前の馬鹿に付き合うくらい、もう慣れている。言っただろ、できることはしてやりたい。それくらいのカッコをつけたい。お前は筋金入りのカッコつけだからな」
「頼もしい限りだよ、ほんっと。薄情なくせにやる時はやってくれるんだからさ」
笑声を漏らして、俺は利二にチャリを貸してくれるよう改めて頼んだ。
頷く利二は直ぐに取りに行ってやるから待ってろと俺に伝えて、リーダーに許可を貰いに行くために踵返した。
俺も事を一報しないといけないから、一緒に踵返して倉庫内へと戻った。