青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



今日も清々しく心中でツッコミをしている一方、


「すぐ取ってきます」


利二は任せろとばかりに頷いて倉庫を出て行こうとする。


「ちょい待ち」


ヨウは単独行動は許さなかった。

グルッとメンバーに目を向けて、「タコ沢」護衛してくれとヨウが指示。


「パシリかよ」


愚痴る(実情パシリくんの)タコ沢は、仕方がなしに重い腰を上げて利二の下へ。


うっわぁ、タコ沢と二人きりとか利二カワイソー。

あいつと二人きりになるとか、俺だったらぜぇーってヤだぜ! 喧嘩売られそうだし!


利二も内心ビビッているみたい。

顔が強張っている。

まさかのお前かよって目をしている。


だけど、さすがは空気を読むジミニャーノ利二。愛想笑いを浮かべて、タコ沢に挨拶。


「宜しくお願いします。谷沢さん。頼りにしてます」


「……お前、あのムカつく地味野郎のダチのくせに、俺をそう呼ぶのか?」



「は? あの……谷沢さんじゃ?」



まさか名前を間違ったか?

利二は引き攣り笑いを浮かべる。


タコ沢はフンと鼻を鳴らして、強めに利二の肩を叩く「気に入った」見所あるじゃないかと褒めちぎっている。


何が何だか分からない利二は、首を傾げて頭上にクエッションマークを浮かべるばかり。

そんな利二を余所に、タコ沢はさっさと行くぞとばかりに利二の腕を掴んで引き摺った。


うん、タコ沢。良かったな、利二に谷沢って呼ばれて!


タコ沢の方がピッタリだけど、お前自身は『谷沢だ!』と吠えているしな……どーでもいいけどタコ沢、ムカつく地味野郎って俺のことか? なあ?


あ、そうだ。


「利二!」



俺は倉庫から出て行こうとする利二とタコ沢、いや、タコ沢はどーでもいいけど、利二に向かって声を掛ける。

振り返る利二は俺の言いたい言葉が分かったのか、


「気を付けるさ」


フッと笑みを浮かべて片手を挙げた。


ほんとうだな、利二。襲われるなよ。ヤラれるなよ。

特に仮チームメートのお前には怪我して欲しくないんだからな。

俺のいっちゃんの理解者なんだし……お前のこと必要としているんだから。

お前がどんな思いで俺と不良の関係を見ているか知らないけど、俺はお前を必要としているよ。利二。


神妙な気持ちで利二(とタコ沢)を見送った俺はブレザーのポケットに手を突っ込んで吐息をつく。怪我は絶対にするなよ。



「はぁーあ。ケイさんと五木さんって、すっげぇー呼吸が合っていそうっスよねぇ。もしかして……舎弟を狙ってたり?」



ん?

なーんか隣からジェラシー紛いのオーラと捨て台詞。


ぎこちなーく流し目にすりゃ不貞腐れ気味のキヨタの姿。


うをーい、お前も嫉妬か! 俺ってば、友情限定で超モテモテだな! できることなら恋愛の方面でも……いや、ココロがいるからモテモテにならなくていいや。


ああもう、そんなに不貞腐れるなって。

お前はお前で頼りにしているし、お前がいないと絶対チームの基盤が歪む。俺がいなくなる以上にさ。


「馬鹿だなキヨタ。利二と俺は友達だって。お前とは違うんだから。お前は俺の弟分、性別が例え変わっても慕ってくれるだろ? ブラザー!」

「はい、勿論っス! ケイさんがアネさんになってもついて行くっス! でもでもでも俺っちってライバルいっぱいなんっスよ。例えば……モトとか」


なーんでそこでモトが出てくるんだよ。あいつはヨウ信者だろーよ。


首を傾げる俺に、


「オレは狙ってねぇって!」


会話を盗み聞きしていたモトが猛反論。

誰がそんな馬鹿そうな舎弟の座なんて狙うかとギャンギャン吠えてくる。

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