青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「だいったいケイが悪いんだぞ! ヨウさんの舎弟でありながら自覚してねぇから! ……オレが口出すしかないじゃん。
その上、身の程も知らず無茶バーッカしてさ!
カッコ付け自己犠牲型阿呆だから、仕方がなしに注意してやっているんだよ!
分かるかキヨタ! オレはヨウさんのためにしてるんだ。ヨウさん一筋なんだ!」
「そりゃ分かっているけどさぁー! なーんか悔しいんだって!」
モトって大概で俺の性格を分かっているよな。
カッコ付け自己犠牲型阿呆っていうのは癪だけど……なんとなく図星を突いている。
ちょっと前まで自己犠牲っぽいのをして、仲間と対等になろうとしていたことがあったな。
そういえば舎弟問題の時、俺が不良と一線引いているって指摘したのはモトだったな。
あいつはよく俺を見てくれているよ、ほんと。アレだよな。
ヨウ一筋な分、俺の不甲斐ない行為を監視してくれているんだろう。
だけど、んー、舎弟ねぇ。
今は俺自身舎弟で手一杯だから何とも言えないけど、そのうち俺にも舎弟というものを作る日が来るのかなぁ。
いやいやいや、俺が舎兄とか想像も付かないし。
不良を舎弟にするんだぜ?
地味の俺がこうさ、舎弟になった不良に向かって「行こうぜ舎弟!」とか、爽やかに笑って俺について来いぜ的台詞を吐く。
まったくもって俺がそんなことを言うなんて似合わないねぇ。
どっちかっていうと人について行きたいタイプだから、引っ張ってくのは得意じゃない。
しかも仮にモトを舎弟にでもしてみろ。
キヨタと超気まずい雰囲気になるだろう!
「はぁあ……なんか悔しいなぁ」
ムッと脹れて小さな独り言を漏らすキヨタは頭の後ろで腕を組んで、ムッスリくんになっている。
仕方が無い奴だなお前も。
俺みたいな奴をソンケーしちゃってさ。
せっかく自慢できる腕っ節あるのに損をしているよ。
白だった髪を俺とオソロの黒髪にしちゃってさ。ほんっと損をしている。
傍目からじゃ不良かどうかも分からないようなナリにしちまって。
微苦笑を零して、俺は165cmしかない弟分の頭に手を置いた。
軽く視線を上げて見つめてくる弟分に俺は目尻を下げた。
まあさ、舎弟のことは置いておいて。
不本意ながらも俺はキヨタを弟分にしちゃったわけだから(断れなかったとも言うけど)、俺の弟分はキヨタってわけだ。
んでもって俺はキヨタの兄分。
それは変わらない事実だってことは知っておいて欲しい。
成り行きはどうあれ正式に兄弟分になっちまっているんだよ、俺等は。
だから言ってやるんだ。
「俺は喧嘩できない。だから不甲斐ない部分はお前がサポートしてくれよな。俺の足りない部分はお前が持っているんだ。頼りにしているよ。
あ、だけど肩を怪我しているんだろ? 無理はするなよ」
俺は腕っ節のない兄分をサポートできるのはキヨタだけだと言ってやる。
キヨタだけだもんな、こんな風に俺を慕ってくれているの。
ま、俺等みたいな兄弟分って、所謂下克上なんだろうな。
「ケイさん……」
キヨタは目を瞬かせた後、パァッと花咲く満面の笑顔を浮かべて「一生ついて行くっス!」腰にタックルしてきた。