青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―




――健太は言った。


“お前を潰すのはおれだ”と。



俺という存在は邪魔らしい。


じゃあ俺が日賀野達と衝突した時、真っ先に潰さないといけない相手は……日賀野チームは潰したいけど健太相手だと尻込みする。どうなんだろうな、これ。  


なんだか苛立ちが募ってきた俺は集会後、誰とも口を利かず硬い表情で物思いに耽っていた。


健太のことで尻込みしている場合じゃない。

分かっているのに、健太のことを考えれば考えるほど鬱になる。


マジでやめてくれよ。

もうカウントダウンは始まっているんだぞ。


板挟みになるようなジレンマに耐えていると、


「ケイちゃーん」


おどけ口調で声を掛けてくれる不良一人。

顔を上げれば、ワタルさんがニヤリニヤリ笑みを浮かべて下唇のピアスを舐めている。

ワタルさんは俺の不安を見透かしていたらしい。


肩を並べてくるや否や、


「答えは出したのりたま?」


ウザ口調で健太との関係をストレートに聞いてくる。

硬い面のまま俺は分からないと真情を吐露。


健太とは友達ではいたい、でもこうやって衝突して傷付け傷付いても相手を友達だと言い張れるか自信がない。


何より、俺はハジメの一件で向こうチームに憤りを抱いている。

友達でいたいけど、向こうチームに身を置いている。

それだけで気持ちが揺るぎそうだと、ポツポツ零す。ワタルさんだからこそ口にできた本音だった。


「なーるへそ。ケイちゃーんの気持ち、分からないでもないヤン坊。
でもさぁ、ケイちゃーんはそいつが嫌いなわけじゃないんでしょ? 自分でさぁ、友達だと思いたいって答え出したんでしょー?

ん? 出しかけ?

どっちでもいいけど、決めたからには貫かなきゃヘタレだっぴ? せーっかく決めたんだしぃ?」



「でもワタルさん……俺、さっきも言いましたけど自信がないんですって。向こうは本腰入れて俺を潰そうとしてますし。ハジメのことだって」


「んじゃあ嫌いになればいいじゃんじゃんじゃん?」


「いや、そんな極端な。なれたら苦労しませんって。どう思ってもやっぱり、友達でいたい気持ちはありますし。だけど自信がないですし。尻込みもしてますし。アイデッ!」


「ぬはははっ! マヌケりんこ!」



チョップを食らわされて頭を押さえる俺に、ワタルさんは奇声染みた笑い声を出した。


なんでいきなり殴るんだよこの人。


ンモー、相変わらずテンションについていけないっていうか……突発的な事をしてくれるんだからぁ!


頭を擦る俺の肩に腕を置いて、体重を掛けてくるワタルさんは「このヘタレ」頬をグリグリ突っついてくる。

い、痛いんですがっ、ワタルさん!



「自分で決めたことに対して、土壇場で信じられない。ハンパなお答えなんてお笑い種っしょ! 嫌いにもなれない、でも友達でいたい。友達だと言える自信もない。

そーんな我が儘を言っても、現状が変わるわけじゃないんだしさぁ。

いいじゃん、今出している答えを貫けば? ケイちゃーんは結局傷付きたくないだけっしょ?」



うっ、図星っす。

ぶっちゃけ傷付けて恨まれるのもヤだし、恨むのもヤだなんだ。

こんな心の葛藤があったっていいでしょーよ! 俺だって悩む時は悩むんだい!


いつも能天気にノリツッコミかましていると思ったら大間違いだぜ!


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