青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―




「しょーがないなぁ。じゃあ、僕ちゃーんが一つアジョバイスをしてやるぴん。ワタルアジョバイス、自分の答えを掴むために闘え。ワタルちゃーんカックイイ!」



ウザ口調は置いておいて、自分の答えを掴むために?


キョトンとする俺に、


「傷付かないのは無理だってん」


だってこんな複雑に糸が絡まってしまったんだから。


だったら無理やりでも糸を食い千切って、自分の信じた答えを掴むまで奔走すればいい。過程がどうであれ大事なのは結果。

それまで何度だって葛藤すればいい、ワタルさんは無責任な言葉を俺に押し付けてくる。


「この衝突で終わりじゃないでしょ?」


ワタルさんは俺の頬を抓んで引っ張った。

限界まで引っ張って引っ張ってひっぱって、バチンと手放す。
 

「ケイちゃーん、対立は仕舞いになるかもしれないけどさぁ。
何もかもが終わるわけじゃないんだからぁ、焦らず長い目で見てみたらぁ? これはこれ。それはそれ。あれはあれでどれはどれっしょ?」


あ、確かに。

俺は腫れた頬をそのままに、納得だと手を叩いた。

そうだよ、何もこれで終わりじゃないんだ。


健太と何もかも、それこそ中学時代の楽しかった思い出もこれで終わらせようとしてた俺だけど、これで終わりじゃない。


対立は終わるかもしれないけど、健太と終わるわけじゃないんだ。どーして終わりだと思ったんだろう。


この状況で傷付かないのは無理だ。

きっと俺は傷付くと思う。


それに健太も傷付くと思う。


望まない関係になり、そして向こうは敵意を抱いた。


俺もそれを受け止める覚悟はできている。ただ衝突することに俺は怖じていた。


うん、もうやめだ。衝突したって、傷付けたって、傷付けられたって、俺は健太を友達だと思いたい。


思える強い心を持ちたい。決めたじゃないか、友達として見ると。


これはこれ、それはそれ、あれはあれで、どれはどれだもんな。


俺は時間を掛けても、健太ともう一度……例え向こうのチームに身を置いていても、いつかまた田山田(たやまだ)を復活させるさ。山田山(やまださん)かもしれないけど。


雲がかった気持ちが晴れた気がする。


「ありがとうございます」


スッキリしたと俺はワタルさんに綻ぶ。


「んもぉ」


世話を焼かせると、ワタルさんは俺の頭をかいぐりかいぐり。

アイタタタッ、髪引っ張っているんだけどワタルさん! わざと? それはわざと?! 痛がる俺に一笑して、ワタルさんは言う。

「いい顔になったじゃん」

いつだってそうだ。

ワタルさんはこうやって人を茶化しながらも励ましてくれる。

人の不安を霧散してくれるんだから。


「ワタルさん、クサイこと言いますけど……やり直しはいくらだってできると俺は思っているんです。一度切れた友達の関係も努力をすれば復縁できますよね?」  


俺の言葉にキョトン顔。

一変して破顔するワタルさんは頭に置いている手をそのままに、クサイクサイと笑い飛ばす。


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