青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



だけど俺だけに聞こえる声で言ってきてくれた。

耳元でそっと、


「ケイちゃんがそう思うなら、きっとねんころり」


賛同してきてくれるワタルさんは、限りなく優しい眼をしていた。


人を小ばかにバッカしている人だけど、ワタルさんって根っこは優しい人なんだ。




貫名渉。

カツアゲ伝説を作っている恐ろしい手に負えない不良。

学校で恐れられている鬼畜不良。



でも俺にとって大事な仲間、気持ちを酌んで初喧嘩に連れてってくれた大事な友達。ワタルさんは俺にとって大切な友達なんだ。



「ケイちゃーんにだけ教えてあげるよんさま。
実は僕ちゃーん、対立しているけどアキラのこと、悪口は叩くけど嫌いじゃないんだよん。今も昔も。
ケイちゃーんが思っているように、僕ちゃーんも実はこっそりクサイことを思っていたりするんだよねぇ。


クシャリと頭を撫でて、


「柄じゃないよんよん」


自分で言っていて鳥肌が立ってきたとワタルさんは顔を顰める。

「そうでもないですよ」

俺はワタルさんの言葉を否定する。


「ワタルさん、とても仲間思いでイケた不良だと思います」


瞬く間にワタルさんから頭を叩(はた)かれた。

正直に言っただけなのに! 頭を擦りながら流し目でワタルさんを見やる。


「今更っしょ」


煽てても何もでないとばかりに鼻を鳴らして、そっぽを向いていた。


珍しくもワタルさんは照れているみたいだ。


なんだか一本取った気分になった。

初めてワタルさんに勝った気分。


でもあからさま顔に出したら、向こうが拗ねるだろうから俺は笑って誤魔化す。


「ワタルさん。お互いに努力が実を結ぶといいですね」

「女を口説くより難しいけどねんっぴ。おーんなの子の方がよっぽど楽だってぇん」


隣から照れを含む台詞が飛んできた。


まったくもってそのとおり。失友した友情を再生させるのは女の子をナンパするよりも難しいと思う。


思うけど、希望を持ったって罰は当たらない。


そうでしょ? ワタルさん。


きっとワタルさんも、心の底では仲直りしたいと思っているんでしょ? 大親友だった魚住昭と。

お互いに希望を捨てずに頑張りましょうね。ワタルさん。


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