青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「俺の存在を無視して呑気に自己紹介していんじゃねーぞゴラァアア!」

「あ、タコ沢。悪い悪い。別に無視していたわけじゃ」



「谷沢だァアアアアアアアアア! このッ、勝負しやがれー! 雪辱を晴らしてやる!」



喧嘩を吹っ掛けてくるタコ沢に、俺は「今はそんな時じゃ」と言葉を濁す。

そんな時、タコ沢に向かって邪魔と言った奴がいた。俺に鞄をぶつけられた不良だ。

鳩尾を蹴りつけてやった不良は未だ悶えているらしく復活する気配は無い。うん、鳩尾は痛いよな。ごめん。心中で謝っておく。

「そいつは俺がやる。退けよタコが」

「タ、コ、だ、と」

哀れこの不良はタコ沢のタブーを言ってしまった。きっとこの後、タコ沢の怒りを買うだろう。ご愁傷様。

俺は不良に合掌する。
不良は俺の合掌に気付くことは無かった。

何故なら、タコ沢が不良に右フックをかましたから。不良の悲鳴が聞こえるが、そんなもん俺の知ったこっちゃ無い。タコ沢の気が済むまで殴られてくれ。


ふと俺はヨウに目を向ける。

一人ひとり伸していくヨウはスゲェけど、ヨウはちょっと疲れているようだ。

人数が人数だもんな。俺はペダルに足を掛ける。弥生に此処にいるよう言うとチャリを前進させた。

さっきと同じ要領で勢いに任せて、ヨウの背後を狙っていた不良に蹴りをお見舞いする。


「あら、ごめんなさーい。俺、足癖悪くて」


嫌味も忘れない。
今だからこそ嫌味が言えるんだ。振り返ってヨウが吹き出した。

「ッ、クク、やるじゃねえかよ。ケイ」

「光栄デスヨ。兄貴」

「言うねぇ。ワタル達も到着したようだぜ」


出入り口にワタルさん達の姿が確かにあった。


「ヘイヘイヘーイ! なあに、もうおっ始めてるの~ん?僕ちゃーんの分ある?」


ニヤついているワタルさん。


「ハジメは随分ヤラれてるみてぇだな」


盛大な舌打ちをしている響子さん。


「弥生は大丈夫そうですけど、響子さん」


何故か俺を見据えているモト……お前、こんな時まで。


「……眠い」


欠伸を噛み締めているシズ…眠い言える場面じゃないと思うけど。

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