青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



不良達は形勢逆転されたことに悔しそうな顔を作っている。


反撃しようとしてもワタルさん達が加わったことで、勝てる見込みも無く数分後には不良達全員が伸してしまった。

響子さんも喧嘩に強いみたいで、男相手と互角に渡り合っていた。


全員伸したことを確認すると、ヨウは銀髪不良を起こして何度も名前を呼んでいた。

銀髪不良は直ぐに目を覚まし、呻き声を上げながら地面に肘を付いて自分で起き上がろうとしていた。


「馬鹿、無茶するんじゃねえよ。ハジメ。あいつ等にヤラれたんだろ?」

「ッ、はは、まー……ね。僕、カッコ悪いな」


「そんなことないって! 私を庇って助けてくれていたじゃない!」


弥生が銀髪不良の前で膝を折った。

何度もアリガトウと弥生は言っている。

銀髪不良は情けないとばかりに失笑していた。


ワタルさんやシズ、モト、響子さんは「奴等か」と俺には分からない話をしている。ヨウも「奴等」と誰かに対して嫌悪している。


皆の後ろで見ていた俺はチャリから降りて、気付かれないようにそっと廃工場から出ることにした。


今、皆が話していることは俺が安易に聞いてイイ話じゃないと思ったから。


どんなにヨウの舎弟っていっても、やっぱり今の俺は部外者だから。


地面に転がっている通学鞄を拾って、俺は大人しく廃工場の外へ出る。

川岸の廃工場とあって外に出るとゆったりとした川が視界に広がった。


喧嘩騒動さえ嗤うように静かな波を立て、川は流れている。


微風が俺を通り抜けていった。

気持ち良いとは程遠い風だ。


チャリをその場にとめてハンドルから手を放す。


ハンドルを強く握りすぎていたせいで指が思うように動かない。軽く揉み解しながら俺は息を吐く。


「奴等、か。何なんだろうな……奴等って」


得体の知れない不安が襲い掛かってくる。

奴等、ヨウ達が嫌悪している“奴等”ってさっきの不良達のことなのだろうか。まだ俺は何も知らないし分からない。ヨウ達の見ている世界を。


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