青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
――ピクリも反応しなくなった舎弟を前に、何もできずただただ名を呼ぶことしか出来なかったヨウは絶望にも似た感情を噛み締めていた。
執拗に殴る蹴るの暴行を受けている舎弟。呼吸はしているようだが、痛みに反応を示さなくなっている。
その隣で舎弟の友が暴力を受け、悲鳴を上げている。
ヤマトは悲鳴が上がる度に、「くそっ、くそっ!」感情を吐き出して押さえ付けている手を振り払おうと躍起になっている。
ヨウの憤りがピークに達した。
五十嵐はあの時の事件の中心人物だった自分達を最後に、こうやって肉体だけではなく精神的苦痛を与えようとしているのだ。自分達の仲間意識の高さを知っているから。
「チクショウッ」
ヨウは柵越しから一階に視線を落とす。
倒れている仲間の哀れな姿に感極まって泣きたくなった(でも泣けなかった)。救いなのは一階に女性群の姿が無いこと。彼女たちは目を盗んで外に逃げたようだ。
良かった、ほんとうに、だけど――!
(シズ、ワタル、タコ沢、モトにキヨタっ……それにケイっ。皆、みんなヤラレちまって。くそっ、俺は何一つ守れなかったのかよ!)
ハジメの時のように、また!
力なく四肢を投げ出している舎弟を見つめ、下唇を噛み締めたヨウは絶対に許さないと感情を爆ぜさせた。
「ンの野郎がぁあ!」
押さえつけられている手に噛み付き、怯んだその手を振り払い、背後に立っていた不良に拳を入れ。
ヤマトを押さえている不良達を蹴り飛ばし(瞬間ヤマトはケンに向かって駆けた)、敗北が分かっていつつも暴れなければ気が済まなかった。
せめてっ、リーダーとして。
漁夫の利作戦を決行させた主犯を討ち取るだけでもッ、討ち取るだけでもッ!
自由になった二人に焦ることもなく、寧ろ嘲笑うように口角をつり上げ、仲間を呼んで自分は後ろで高みの見物。
再び取り押さえられ、暴行を加えられても、ヨウは暴れた。怒り任せに暴れ、喉が裂けんばかりに声音を張る。
「五十嵐っ、テメェ覚えとけッ! 仲間にした仕打ちっ、ハジメにした仕打ちッ、必ず返すからな。これで終わってたまるかっ。テメェだけはぜってぇに許さないっ、あの時も、今もっ、今この瞬間も―――ッ!」