青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―


奴が標的にしているのはモトにとって大尊敬している絶対的な存在。

庇うように俺に背を向け、


「ケイには手を出させない!」


声音を張ってヨウと対峙する姿勢を見せた。


「ヨウさん。今のケイはチームにとって必要不可欠な存在。副リーダーに手を出したいなら、まずオレとタイマンを張って下さい!」

「ば、馬鹿! 退けモト! これは俺とヨウのタイマンだぞ!」


ヨウがリーダーを一旦降板して一番傷付いていたのはモトだろうよ! こんなことをすれば、お前はもっと傷付くじゃないか!

さっさと退くように怒鳴るも、


「オレはケイを選びたいんだ!」


俺の声量を上回る声でモトは決意を露わにした。

自分が今選ぶのは尊敬している兄分じゃない。

チームの意味を理解して、兄分をひっくるめたチームメートを想う副リーダーなのだとモト。


だから副リーダーが倒れられたら困る。

手を出したいなら、まずは自分を倒せとモトは兄分に向かって吐き捨て、弾丸のように駆けた。


「戻れモト! これは俺の役目じゃないか!」


人の制止も聞かず、

「いっぺん顔を洗って来い!」

モトはヨウに大喝破、己の拳を相手に向けた。

こんな状況でも拳を受け止める素晴らしい反射神経を持っている舎兄は完全に混乱していた。


好き好きオーラを出す弟分に拳を向けられるなんて思わなかったのだろう。


「モト!」止める俺、「自惚れるな!」足を上げて蹴りをかますモト、それをどうにか避けるヨウはますます混乱。


なんだか変な三つ巴の図が出来ている。


ふと周りを見ると倉庫内にいたチームメート達が様子を見守っていた。


嗚呼そうか、皆、なんだかんだ言って俺とヨウを心配してくれているんだな。


そしてモトはヨウの姿に見ていられなくて、ついに飛び出しちまったのか。


だったら俺が今、してやることは止めることじゃない。

兄弟分のあいつ等を見守ってやることだ。


「お、おいモト! 止まれっ、テメェじゃ俺に勝てねぇよ!」


「ンなの知るかよ、ざけるなよ! 久々に顔を出したらオレ等の決意に茶々を入れて!
自分は何も言わないくせに、オレ等のことには口出しなんて。あんたなんかな、アンタなんかなぁっ!」



上擦った声を出すモトは切れのある拳を振り、後ろに飛躍するヨウの隙を与えることなく懐に入ってもう一発ストレートパンチ。


だけどモトはヨウよりも手腕的に下だから簡単に受け流された。


勢いづいたモトの体がやや崩れるけど、すぐに弾みをつけて上体を起こし、執拗にヨウに食って掛かる。


「モト、テメェとはタイマンなんざ張りたくねぇよ!」


やめるよう呼びかけるヨウにも、


「るっさい!」


大きく拒絶し、感極まったかのように熱い吐息をついて下唇を噛み締めた。


「ヨウさんは何も言っていない! オレ達になんにも言っていない! オレ達はチームなのにっ! 貴方にとって所詮その程度のものだっただろ!」

「ちげぇって、モト!」


「何が違うんだよ! 何だよ、自分だけ負けたような情けない面するなよ。オレだって情けない面をしたいんだよ、こんなダッセェ負け方したんだから!」


目が覚めたかのようにヨウは目を見開いた。

それに気付かないモトは兄分に馬鹿だと叫んだ。

馬鹿だと連呼した。


昂ぶった感情をそのままに、避けるヨウに「来いよ!」挑発してみせる。


「アンタだったらオレくらい容易に倒せるだろ、伸せるだろ、殴り飛ばせるだろ!」


ヤケクソで怒鳴るモトの一方的な暴言にも、ヨウは静聴。

発言者の暴言に耳を傾けている。


「大敗したのはなぁっ、アンタだけじゃないんだよ!」


宙を切る右蹴り、ヨウは紙一重に避ける。



「みんな負けちまっているんだ、みんな悔しいんだ! どーしてアンタはそれを分からないんだよ! ……何がチームだよ、一緒に動いてナンボのもんじゃないのかよ!
これはチームの大敗であってアンタ個人の負けじゃないんだバッキャロ――!」


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