青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
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エアホッケーをしているワタルさんとモトを眺めながら、俺はグッタリとスロットマシーンに備えられている椅子に座っていた。
さっきまで俺とワタルさんがエアホッケーをしていたんだけど、やっぱ疲労した体にエアホッケーは辛い。
しかもワタルさん強過ぎ。
瞬く間にスマッシュを決めて来るんだもんな。
守ることで精一杯だったよ。
その前はヨウとしたんだけど、やっぱりスマッシュが凄いのなんのって。
シズはホッケーをせず、椅子に座ってうたた寝をしている。ホント寝ることが趣味なんだな。
そうそう、モトとやった時は互角だったんだ。
いやモトとした時は、向こうの一方的にゲームがどうのこうので試合に集中してなかったからかもしれない。
打ってくる度に「ゲームのことだけどさ!」って言ってくるんだぜ?
モトのゲーム好きに俺はある意味感服。やりたがっていたソフトを貸すことにした。
貸すと言った瞬間のアイツの顔、ホント子供のように輝いていた。
試合終わってもモトはさっきまで執拗にどんなソフトを持っているか聞いてきたんだから、ホント好きなんだな。ゲーム。俺も好きだけど、モトまでじゃない。
膝に肘を付いてボンヤリと試合の様子を見ていると、ココロが俺に何か飲むかと話し掛けてきてくれた。
「何か飲むなら、買って……来ましょうか?」
「いやいや、そんな悪いよ」
「そ、騒動でお疲れ……か……と思って……わ、私、何も役に立ててないし。せ、せめて何か飲み物をと…思って。でもみんな要らないって言うんです」
落ち込んでいるココロは、目を泳がせながら手遊びをしている。
これは罪悪感を抱く。
断って罪悪感を抱くのも変な話だけど罪悪感がヒシヒシ。
ココロは「何か用があれば……」と口ごもっている。
こうやって気遣ってくれるココロは凄く優しいんだと思う。
俺が飛び出した後、ずっと気にかけてくれていたみたいで戻って来た時、「怪我はありませんか?」と心配してきてくれたし、他の皆に怪我は無いか聞いていた。
仲間のひとりが病院に行ったってことを聞いて、慌てて電話をかけていたしな。
ココロって名前のとおり、心優しい性格なんじゃないかと思う。
まだ今日会ったばっかだからハッキリとは言えないんだけどさ。
喧嘩騒動の手助けを出来なかったから、自分の出来る限りのことをやりたいんだよな。
俺は鞄から小銭入れを出して200円をココロの手に押し付けた。
「サイダー。ペットボトルで宜しくな」
「え。あ……は、はい!」
「じゃあ、俺も同じのな」
いつの間にやって来たのか、ヨウが五百円玉をココロの手の平に落とした。
パァと顔を明るくしてココロは小銭を握り締めると、小走りで階段に向かって行った。
可愛らしいよな。ああいう顔をする女の子。見ていてほのぼのしちまう……そう思うのは男として普通だぞ? 俺は断じて変態じゃない。
ココロの背を見送った後、ヨウに目をやる。
「エアホッケーはいいのか?」
「休憩だ。ワタルとしていたら、体力消耗しちまった」
「ワタルさん強いもんなぁ」
「俺ほどじゃねえけどな」
その自信、是非俺にも分けて欲しいぜ。断言できるヨウに羨ましさを感じた。