青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「元気だといいんだけどな」

苦笑する俺に、


「素敵なお友達さんですよね」

ココロは健太についてポツポツと零す。



「どんなに冷たくしようとしても、心の中ではケイさんをお友達だって思っていました。
ケイさんがドラム缶山の雪崩れに巻き込まれた時も……真っ先に助けようとしていましたし。きっと向こうも心配してますよ。ケイさんのこと」


「だといいけどなぁ。どーなるんだろ、俺達……乱入者によって別の道に進んでいるけどさ。結局はまたぶつかるんだろうな……向こうチームと」



今度は本気でぶつかれないだろうな。


健太の弱い面を目の当たりにしたのに、どうやって本気を出せと?


……傷付け合うだけだな、俺達の友情。


健太の言うとおり、中学時代の関係は邪魔だったのかもしれない。

冷徹を貫くあいつのように、俺も冷徹になれば、少しは違った未来が見えたのかな。



「いいえ、きっともっと傷付いていたんだと思いますよ」



無意識に口に出していた独白を、ココロは全否定して「大切にしていいんだと思います」中学時代の関係を肯定してくれる。


「偽っても結局、心は正直でありたいものです。
確かに傷付け合うばかりかもしれません。
でも心を偽っていたら、今以上に傷付け合っていたと思います。ケイさん、自分の選択に自信を持っていいと思います」


回している細い腕に力を込めて、ぬくもりと優しさを体に押し付けてくれる彼女に俺は自然と微笑を零した。

「そうだな」

首を捻って彼女に目尻を下げる。

「そうですよ」

自信を持てと頷くココロにまた一笑。

不思議と胸のつっかえが掻き消えた。


どうしてだろうな?




横断歩道を横切り、本屋の前を通り過ぎ、バス停でたむろしている学生を流し目。俺は彼女と街道を歩く。 


「ん? そこにいるのは田山じゃんか!」


街中で奇遇の出会い。

俺は買い食いという道草を食っているジミニャーノ二人とばったり出くわした。


顔を合わせたのは部活生の光喜、透。

今日は休みなのか、それともサボったのか、二人で巷でちょいと有名になっているたこ焼きを立ち食いしている。


お行儀わるいなぁ、お前等。

道の隅によって立ち食いとか、お母ちゃんが見たら泣くぜ!


心中でツッコむ俺を余所に、

「噂の彼女か!」

挨拶ナシに光喜が絡んできた。

おい勘弁しろって。こっちは急いでいるんだっつーの。


人の良いココロは、


「お友達ですか?」


俺に質問した後、光喜と透に挨拶。体調が悪いくせに……律儀なんだからもう。


挨拶を返す二人は好奇心の宿った眼で俺とココロを交互に見やる。


で。


「あ、アリエネェー! 噂には聞いていたけど、田山っ、普通に彼女を作っているとか! フツーに可愛いとか! ない、ないわ!」


見事に悪態ついてきやがった。来ると思ったぜ!


「もぉー、光喜くん。祝福してあげてこそのお友達じゃない? でも本当に圭太くんには勿体無い彼女さんだね」


「デート中?」なんて聞く透。


残念、送っている真っ最中だっつーの。

デートはまだ俺等の間じゃ禁止。


ちゃーんと物事が全部解決してから、おデートさせてもらうつもりです。はい。


「ちょい急いでいるんだ。また今度な」

「そう言って、彼女との時間を長く持ちたいんだろう? この裏切り者! クラスから、特に女子から怯えられてるくせに。お前ありえねぇぞ!」


恨めしそうに見据えてくる光喜さん。

ははっ、前半はスルーするとして、後半は余計だ。


どーせ俺は不良と絡んでる人相はフツー、でも素行の悪いジミニャーノだよ!


クラスメート(特に地味女子)に怯えられてなぁ、超胸が痛いんだぞ! なんとなく居心地悪くも感じているんだぞ!

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