青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「もしもの時はあいつと勝負して、楽に勝ってみせるさ。任せろ」


フフンとヨウが鼻高々に頼り甲斐のある台詞を口にした。


「な、なら安心かも」


俺はホッと息を吐いて、いつも日賀野に勝っていたのかと尋ねる。

こんなにも胸を張って自慢するんだ。

力量はどっこいどっこいのようだろうけどヨウは腕前に自信あるのだろう、中学時代は日賀野に余裕で勝っていただったんだろうな。


するとヨウはたっぷり間を置いてゴッホンと咳払い。



「ま、中学時代は引き分けだったけど……けど、この俺が負ける筈ないだろ! 舎兄を信じろって! こんな俺でもあの頃に比べれば格段に成長したんだしな!
そうだ、俺も成長したんだっ、今なら頭脳戦でもヤマトに勝てる筈だ! ポーカーではイカサマでいつも負けてばっかだったけど、今ならポーカーだって!」


……聞かなきゃ良かったぜ。 


俺は空笑いを零して、もしもの事態が来ないことを切願。ヨ

ウの実力を見下しているわけじゃないけど、日賀野の実力も嫌という程分かっている。

舎兄がこれだもんな。信用なんねぇー。



そうこうしている内にも工事現場が見えた。

ハンドルを切って俺はチャリを道端にとめると仲間達を目で探す。ヨウも携帯で連絡を取って仲間内の居場所を確認。


するとシズ・キヨタペア、そしてワタルさんは各々工事現場から見える“小さな光”を探しているらしい。


だけど此処が該当する工場現場かどうかも分からないし、時刻は夜。


例えばヒントがメモ紙だとしたら、この時刻は不利だ。


大体小さな光ってのが気になるんだよな。何だよ、工場現場から見える小さな光って。


工場現場から見える・見える・見える……わかるか!


探偵ごっこをしているんじゃないんだ。体は子供、頭脳は大人な……わけないんだぞ!


心身共にただの高校生でいドチクショウ!


黒ずくめの組織と闘っているんじゃないんだ! アタマ使わせるなー!


やきもきしながら、俺はヨウの指示で仲間達と合流するために一旦工場現場ギリギリまでチャリを走らせた。


先に到着していたシズ達は到着するや否や、俺とヨウに日賀野チームがいると顔を顰める。


付近を徘徊しているらしい。

シズ・キヨタペアは副頭さんに遭遇したそうだし、ワタルさんは魚住と顔を合わせたとか。


マジか、俺等と同じ?


ということは注意を配るのは五十嵐だけじゃないってことか!

くそっ、こんな時に、鉢合わせしたら最悪だぞ。


「ふぁ~……ねむっ。とにかく奴等は放置だ。会っても、極力……喧嘩を吹っかけるな。特にワタル……ヨウ……控えておけ」

「血の気が多くてごめんちょいちょーい」


既に喧嘩を売ろうと考えていた。

舌を出すワタルさんに、シズは面倒事を増やすなと溜息。


余所でヨウも「喧嘩売るかも」なんてボソボソ。


いやいや、やめてくれよ。

今はゲーム中なんだから! 俺なんて喧嘩を売られても日賀野達を構う余裕なんてないぞ。 



「敵さんが来たみたいっスよ」



キヨタがお喋りは仕舞いだと指摘。首を捻って状況確認した俺等はゲンナリと吐息。

日賀野達ではないけど、なんだかチンピラみたいなヤンキー兄ちゃん方が群でこっちに来てやんの。


徒歩組もいりゃ、バイク組もいるって……ははっ、これぞ“妨害”と呼ぶべき状況なんだろうな! 五十嵐め、高校生相手にドチクショウな手を使いやがって!


俺達は一旦敵を散らすために解散。

各々連絡することを確認して乗り物を走らせた。

路面を走り去る仲間達を余所に、俺はヨウと脇道に入る。


路地裏ではないけど人目の少ない細い道だ。

両サイドのブロック塀を横切って俺はヨウに状況確認を求める。


「バイク二台が来る」


と言われて、俺、引き攣り笑い。


こんな細い道でもバイクで突っ切ろうとするその執念には惚れるんだぜ! ……やべっ、これじゃあすぐに追いつかれるぞ。

ここら辺は一本道が多いから撒こうにもっ……仕方がない!

< 698 / 845 >

この作品をシェア

pagetop