青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「キヨタの元気に、俺は救われているんだ。ちょいネガティブなっていたら、お前が励ましてくれるから。サンキュな」

「ケイさんが元気になってくれたなら、俺っちも嬉しいっス! 少しは役に立っていると実感が湧くっス」


弟分が頬を掻いて照れている。

あ、そういえばこいつ、俺に認められたいと随分前に言っていたな。


自分なんて役に立っていないとか思っているんじゃ……バカだな。そんなことないのに。


俺は立てていた膝を崩して、キヨタの瞳を見つめた。ちょっと間を置いて口を開く。


「キヨタはさ。ちっとも手腕の無い俺のことを尊敬してくれるけど……俺が兄分でいいのか? なんか損してね?」


「えええっ? 損ってなんっすか! 俺っち、手腕とかカンケーないと思っていますよ?

そりゃあ、最初こそ手腕が無い上に地味っこいナリで……『どうしてこの人が有名なヨウさんの舎弟なんだろう?』とか思いましたけど俺っち、結局人は気持ちだって答えを出したんです。


ほら、ケイさんって誰に何言われても絶対舎弟をやめなかったじゃないっスか。

ヨウさんと舎兄弟を解消するまで、絶対に自分からはやめなかった。凄いと思いますよ。


逆境に立たされているのに、みーんなから肩書きだけの舎弟だと言われているのに、陰でこっそりと努力しているケイさんは凄いと思います。

熱狂的ファンのあのモトがケイさんを認めるくらいなんっスから、そりゃあ、凄いも凄いって俺っちは思います」


「そっかなぁ。舎弟を白紙にできず、なあなあになっていただけと思うけど」


「直向きなんっスよ、ケイさんって。逆境を跳ね除けるくらい真っ直ぐに努力してます。

しかも池田チームとの一戦で、舎弟に立候補していた俺っちの力を最大限に引き出してくれようとした。俺っちを信じてくれたじゃないっスか。

普通はできませんよ、敵意を見せている舎弟立候補に塩を送るなんて。
それはケイさんの優しさであり強さなんだと思うっス。あの心意気に俺っちは惚れたんっスよ」


あどけない笑顔を見せてくれるキヨタに、何だか照れた。

そんなにも格好をつけているんだな、俺。  


けどキヨタだって負けていない。

モトと違う方面から俺を見てくれているし、何より兄分を支えてくれる。


つい先日、モトがヨウの悪いところを指摘するために喧嘩振ったことが一つの支えのカタチだとしたら、キヨタの励ましもまた一つの支えのカタチだと思う。

うん、ほんとうに……そう思う。


「キヨタの方が凄いと思うけどな。地味の俺を、こうも尊敬してくれるから。お前、俺の元気の素だよ」

「こ……光栄っス! なんだか面と向かって言われると照れるっスね。うわぁ、どうしよう褒められちった!」


照れ照れに頬を掻いて照れ隠ししているキヨタに一笑して、俺は“いつか”を考えた。


もし近未来、舎弟を作るとしたら俺はきっと――まだ俺には兄分としての力量がないから今は期待することを言わないけど、舎兄になる心構えが出来たら、俺は俺自身を真摯に支えてくれる奴を舎弟にしよう。


舎兄なんて柄じゃないけれど、こいつの舎兄になる努力ならしてもいい。目前の後輩くんにはまだ内緒だけどな。


あーあーあー肩まで不良の世界に浸かっちまってどーするんだろうな、俺。舎兄になりたいとか、どーかしているかも、ほんと。



こうしてキヨタに元気を分けてもらった俺は食後、皆と再度ヒント探し開始。



ヒントを探すより、五十嵐達を捜した方が良策かもしれない。


だけど奴等のことだから遠くに身を隠しているかもしれない。

近場かもしれないけど、到底三日以内に捜し出せそうに無いからこうやってヒントに賭けている。


もしもヒントが駄目だったら、そん時はそん時だ!

ネガティブは考えないぞ、考えない!


ココロのことも大丈夫だと言い聞かせるぞ。ノットネガティブだ!


ヒント探しに対し、ヨウは溜息混じりに胡坐を掻いてうーんっと唸り声を上げた。



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