青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―




「小さな光ってのがなぁ。小さい光。スモール……スモールライト。いやそりゃ、猫型ロボットの道具。んー……こうなりゃ工事現場から光が見えるところ、ぜーんぶ探してみっか。あ、これってナイスアイディアじゃね? アッタマいい!」



爽やかでイケメンに笑顔を作る我等がリーダー。


だけど冗談じゃない。

今の時代、光だらけだ。夜なんて特に光だらけだから、どれを頼りに探せばいいか分からないっつーの!


能天気に笑うリーダーを余所に俺等チームメートは溜息。勿論この案は却下になった。


刻一刻と過ぎていく時間。


暮れてしまった空は時間経過と共に更けていく。


八時が過ぎ、半が過ぎ、九時が過ぎ、また半になり……九時半を迎えた頃、ヨウがもういっちょシラミ潰しに探してみるかと提案。


体を動かしていた方が性に合うと意見を出してきた。


あんまり体力は削りたくないけど、この時ばっかりは俺も賛同する。


妨害は怖いけど、頭ばかり使っていたら煮えつまりそうだったんだ。


他の皆も同意見だったのか、探しに行こうか口々に意見し始める。


「うっし決まりだ」


ヨウは手を叩いて皆に指示す。行動開始だ、と。


「情報収集組も今回はこっちを手伝ってくれ」


ヨウの頼みで弥生やタコ沢もヒント探し組に加わった。


うん、情報係りなら利二もいるしな。

あいつはバイトをしながらも俺達のために情報を収集してくれているだろう。

チームは一丸となってヒント探しに熱を入れよう。




――コン、コン、コン。




行動に水を差すようなノック音。


浅倉さん達かな?


俺達は扉方面を見た。

開かれた扉の向こうには浅倉さん達、だけどそれだけじゃない。

まさしく今、脳裏に過ぎらせていた人物、五木利二の姿もそこにはあった。


「差し入れです」


俺達のためにバイト帰りにも関わらず間食を買って来てくれた利二は歩んで、両手のビニール袋をヨウに差し出した。


受け取るヨウは、「サンキュな」綻んでビニール袋を受け取った。


今から出掛ける予定だから、戻って来て食べることにする。感謝を口にするヨウに利二は笑みを濃くした。


「差し入れはこれだけじゃないんです。情報も幾つか手に入れてきました」

「マジか?! そりゃ助かるぜ! ちょ、テメェ等、行動する前に五木の情報を聞くぞ」


興奮するのは何もヨウだけじゃない、俺達だってそうだ。


さっすがは利二、俺の愛したジミニャーノ!

あいつのことだから必死こいて情報を入手してきたに違いない!


早速利二の話を聞こうとしたその時、


「その前に」


彼は今日一番の笑みを見せて飛びっきりの差し入れを受け取って欲しいと俺達に言った。

意味が分からずキョトン顔を作る俺達に構わず利二は扉に振り返って目尻を下げた。






「彼、荒川さん達のお仲間でしょう?」






時が止まった。


開かれた扉からひょっこりと顔を出してくるその不良は見事な銀の髪をしている。


キャップ帽を被ってるけど、隠れていない部分だけで分かるその銀髪。

松葉杖をついて部屋の中に入ってくる不良は、すぐに立ち止まって被っているキャップ帽を取ると愕然としている俺達に一笑。

< 707 / 845 >

この作品をシェア

pagetop