青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「たむろ場を変えられたかと思って焦ったよ。でも、五十嵐が復活していると聞いて居ても立ってもいられなくてね。五木と此処に来たんだ」
「そうか、テメェも大変だったんだな……悪かった、あの時は助けられなくて」
「いいんだ、ヨウ。僕もチームに迷惑を掛けたんだ。利用されたくもなかったしね」
苦笑いするハジメは弥生に視線を流し、視線で軽く詫びている。
彼女は口をへの字に曲げて、
「バーカ、心配したんだから」
鼻を鳴らしていた。
うん、ほんとにな。古渡に対する執念は凄まじかったんだぜ。
見せてやりたかったよ、あの時の弥生。
「まだ本調子じゃない。だから僕に出来ることは限られている。明日には戻らないといけない。それでも手伝えることは手伝うから。悪いね、戻っておいて早々」
「阿呆、体を優先しろ。テメェがチームに戻って来たってことだけで十分だ。良かったよ、マジで……安心した」
ヨウの言葉に一笑を零すハジメだったけど、早速本題に入った。
そう、五十嵐が出題したヒントのことだ。
事情を話して手詰まりしているのだと説を明すれば、ハジメは一思案して地図を見せてくれるよう頼んでくる。
手早くモトが地図を手渡すと、
「五木からある程度は聴いたよ。そして僕なりに推測していた」
ハジメは工事現場の印がついた地図を雑に広げた。
ぺろっと口端を舐めてゆっくりと目で印を辿る。
「工事現場から見える小さな光ってのは、多分比喩表現だと思う。単に小さな光、イコール光で考えるのは賢くない。五十嵐のことだから、少し捻ってある筈。光と聞いてさ、皆、ナニを思い浮かべる?」
質問に俺等は腕組み。
光……ライト? いやそれは英語にしただけだし。
光、電気、電球、懐中電灯、あったかい、眩しいにうーん、うーん。
「光って言えばさぁ。やっぱ電気だけど、太陽も想像できるよね」
弥生の意見に、「どんぴしゃ」ハジメはまさしく太陽のことだと正解を口にする。
名探偵のお言葉にますます俺達は頭を捻る。
どういうことだ、もっと噛み砕いて話してくれハジメ探偵。
凡人には話が見えないって。
小さな光イコール、太陽。太陽って規模大きくないっすか?
クエッションマークを浮かべる俺等に、
「太陽と言っても単なる太陽のことじゃない」
ハジメはギブスをしている右手でゆっくりとある工事現場を指差す。
そこは比較的に規模の小さい工事現場。
確か道路の舗装工事がされていたと思うけど……ハジメはそこを指差し、
「近所に電気屋があるだろ?」
某大手電気屋の名前を口にする。
その看板を思い出して欲しいと目を細める。
俺達はハッと目を見開いた。
そうだ、その某大手電気屋看板は太陽だ。ニッコリニコニコした顔のついている太陽さんじゃないか!