青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「僕と五木は此処に来る前に確かめに行ったんだ。

そしてこの工事現場から丁度、豆粒みたいな看板が見えた。
それはまさしく、五十嵐のいう工事現場から見える小さな光。


つまり某大手電気屋の看板のことを指していたんだ。

小さな光が単なる光なら、夜にしか当て嵌まらない。昼に探すのは困難だ。


だけどこれなら……きっと五十嵐はこの某大手電気屋の出入り口付近にヒントを置いている筈。


あいつもヒント探しばっかりさせたくないだろうか、もっとゲームを面白くするためにヒントの置き場所は見分けのつく出入り口付近に置いていると思うよ。

あくまで僕の推測だけど。五木の情報によると、ここら一帯の五十嵐の姿を目撃したって話だ。だろ? 五木」


「ああ。昨日今日の話ではないが、最近、某大手電気屋や工事現場付近を徘徊する五十嵐を目撃したと情報を入手している」


「ということで……こんなところだけど、皆。何か意見等は?」


名探偵ハジメの説明に意見なんて出てこない。

寧ろ、出てくるのは感動感激感涙。

さ、さ、さっすが我等がチームの誇る頭脳派! インテリ不良さまだぜ!

俺達が知恵を出そうと束になっても考え付かなかった見方を糸も簡単に考え付いた挙句、物の見事に推理ちゃって。


戻って来て早々大手柄じゃないか!

チクショウ早々憎い仕事しやがってっ!


やっぱお前がいないと俺等チームは駄目なんだよハジメ! 戻って来てくれてありがとう、ハジメ。ほんっとにありがとう、ハジメ。


本調子ではないけど、完全チーム復帰したハジメのその存在、そしてお手柄推理に俺等は完全に活気付いていた。


気持ちが異様に昂ぶって俄然やる気。

手掛かりがなに一つもなく、負け喧嘩さえ思っていた逆境を跳ね除けた気分さえいた。

状況が不利な事には違いないのに、重々しい空気は一掃された。


仲間が戻ってくるだけでこんなにも違うものか。

俺達の纏う空気は闘志に燃えている。


「早速行くぞ、その某大手電気屋に。我等がインテリ不良さまの推理を頼りにな」


ヨウは活き活きとした口調でチームに指示。


「俺達の喧嘩はこれからだろ? 野郎ども」


負けん気の強い希望に満ちた瞳を向けてくるリーダーに、当たり前だとばかりに声を張るチームメート。


そうだ、これからなんだ。

時間は刻一刻と迫っているけど、精神的に追い詰められる必要なんて無い。逆に俺達があいつ等を追い詰めていかないと。


ヨウは軽い足取りで一番乗りに一室の扉に向かう。


その際、ハジメに此処に残って体を休めるよう命令。兼、弥生と連絡係りを受け持つよう言う。

ヒントが見つかったら連絡するから、そう告げるリーダーの二人への気遣いはモロバレ。


当人のハジメは苦笑、弥生はといえば待機なんて嫌だと却下を申し出。


手腕のある仲間を一人こっちに寄越して欲しいとリーダに頼んでくる。


情報収集に行って来るから、なんて言うもんだからびっくり。


てっきり戻って来たハジメと会話を交わしたいと思っていたのに……だけど彼女はあどけない笑顔で言うんだ。


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