青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
おい嘘だろ……半分に裂かれたってことは。
一部を握り締めるヨウは中身を開いて舌を鳴らした。
「読めねぇ」
半分じゃ解読不可能だと向こうのリーダーにガンを飛ばす。
「それを渡せ」
同じく舌を鳴らす日賀野は、半分に裂かれたメモ紙を握り締めて一歩足を踏み出した。
冗談じゃないとヨウはメモ紙を握りなおし、そっくりそのまま台詞を日賀野に返した。
「それを渡せよ!」
「チッ、休戦つったが貴様等相手じゃそれも長続きしねぇな。荒川」
「同感だな。さっさと渡せ、俺達は一刻も早く仲間を救出しねぇといけねぇんだよ」
「ヤなこった」
日賀野は自分達も同じなのだとガンを飛ばし、渡せと大喝破してくる。
「渡すか!」
ヨウは負けん気をフルに発揮。両者決して譲ろうとしない。
青い火花を散らすヨウと日賀野。
リーダー二人が喧嘩を起こしたら、それこそチームも一丸となって喧嘩に参戦。
某大手電気屋前は大惨事になること間違いない。
勿論そんなことをしている場合じゃない。
俺達は仲間を救わないといけないという優先順位を持っている。
おかしいな、気持ちは同じなのに。この瞬間にまでいがみ合うなんて。いがみ合うなんて……いがみ合うなんて。
「こうして衝突するとお互いに負傷。ゲームの勝率は二割減少するでしょう」
能天気な声を出してきたのは向こうチームメートのひとり。
「アズミさぁ、思うんだけど…、今この時点でヒントを奪っても無意味だと思うよ?」
バイクに座ってピコピコパチパチとゲームを堪能している女不良のアズミだ。
両チームの衝突に呆れながら「たっくんラブ!」、キタキタキタと乙ゲーに黄色い悲鳴(おいおい)。
次いでアズミは俺等と自分のチームを交互に指差す。
今の面子じゃ五十嵐にほぼ勝てないときっぱり断言。
自分のチームも敵チームも五十嵐にシてやられると肩を竦めた。
「犬死にもいいところだよねぇ」
はぁっと溜息をついて、後ろ向き発言。
アズミは単に超乙ゲー好きの二次元ラブちゃん不良だって思っていたんだけど、実は日賀野チームを代表するインテリ不良らしい(嘘だろ。見えねぇって!)。
ゲームを一時中断すると両チームをこと細かく分析。
両チームの特徴を的確に指摘するために、まずは俺達のチームを指差した。
「対峙してる荒川チームは攻撃突破型。アズミ達チームにはない攻撃性、つまり“押し”を持っている。
その押しがアズミ達チームにあれば勝率は25%アップ。半々の確率で五十嵐に勝てる」
次いで自分のチームを指差し、目を眇める。
「アズミのいる日賀野チームは攻撃作戦型。
荒川チームにはない作戦と“守備力”を持っている。その守備力が荒川チームにあれば勝率は25%アップ。半々の確率で五十嵐に勝てる」
でもお互いに不足している。
だから各々五十嵐達に勝てる率は25%だとアズミは肩を竦めた。
どんなにお互いが別のチームと協定を結んでいたとしても、勝てる率は25%から上にあがることはない。
何故ならば五十嵐達が完全に“今”の自分達を攻略しているから。
シビアな現実を口にするアズミは「仲良くすれば勝率も上がるのに」、能天気に欠伸をしつつ助言。
冗談じゃないと両チームのリーダーは素っ頓狂な声音を上げた。