青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「誰が好き好んでこいつと」
唸る両チームの片割れ、日賀野はアズミにどっちの味方だと些か不機嫌声で質問を投げる。
アズミはむぅっと脹れ、前々から因縁対決に興味などなかったと主張。日賀野に向かって舌を出す。
ただ今絡んでいるチームが好きで一緒にいるだけ。
中学時代の因縁など、自分には無関係なのだと鼻を鳴らした。
それを言っちまえば俺や健太だって……なあ?
俺と健太は思わずお互いに視線を向けて、苦笑を零す。
「そうやってぶつかり合い、まーた五十嵐の策略に嵌る。
バーカみたいだとアズミ思うんだけど? アズミ、あんま馬鹿なチームに身を置きたくないんだよねぇ。面倒事にも巻き込まれたくないし。
こうしている間にも帆奈美姐の助ける時間は削られていく。
大敗するのは目に見えている。
分かっているんじゃないの? 今のままじゃ勝てないことくらい」
最初から勝てないチームに身を置くほど、自分も馬鹿じゃないとアズミ。
本当に負けを覚悟で突っ込むなら、チームを抜けてしまいたいとまで愚痴を漏らす。
更にぶっすーっと頬を膨らませて、
「帆奈美姐が泣く思いをするよ?」
自分のリーダーに意見を述べた。
「バッカみたいに意地とプライドを取って、仲間を犠牲にするのって変なの。ヤマトも、向こうチームのイケメンさんも、今が何がしたいの?
アズミは因縁も何も知らないしカンケーないけど、今の状況を把握することくらい分かるよ。ね、たっくんッ、うっわぁあ! お客さん来たみたい!」
一変してアズミが悲鳴、どうやら五十嵐の回し者がやって来たようだ。
無用な喧嘩は買うだけ体力の無駄。
俺達は一旦身を引くために、各々乗り物に乗って撤退。
粘着質の高い不良達はヨウや日賀野達といった不良に個人個別に私怨を持っているのか、はたまたそうするよう五十嵐に指示されたのか、バイクに跨って執拗に追い駆け回してきた。
逃走する大半はバイク組、俺とヨウだけチャリ組。
前を走るバイクを見送りながら、俺は脇道に入って先回り。
「あんま逸れるな」
集団で行動したいと指示してくるリーダーに相槌打って、舌を噛まないよう頼んだ。
「あの道を使えば早いから。うっし、気合を入れろヨウ」
「ゲッ……まさか。テメェ、あの階段を」
ヨウの引き攣り笑いに、「そのまさか!」俺は満面の笑顔で団地に飛び込む。
この先の四つ角交差点で皆と合流するには、団地の敷地に入って例の階段を下るしかない。
そう、決戦の時に使ったあの階段なんだぜ!
「あそこはムリムリ!」
兄貴の懇願なんて聞いちゃられねぇ。
俺はハンドルを切って瞬く星の下、夜の空気を切るように――ドンッガン、ガンガンッ、ギャアァアアア!
悲鳴を上げつつ、ブレーキも悲鳴を上げさせつつ、一気に下ると細い道を突っ切って大通りに戻った。
「うぇっ」
最悪だってヨウは嘆き、おぇっと顔を顰めているけど、ははっ、俺も大概で参っているんだからな! 運転手がいっちゃん緊張するってこと忘れるな!