青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「アキラの情報網によると五十嵐は十ほどチームと協定を結んでやがる。
各々実力チームだと聞いたが、こっちにも協定がいる。恐れるに足らない。
だが問題は数。
向こうの数に手間取って、時間をロスしちまうことは致命的だ。
何故だか分かるな?
このゲームはタイムリミットが決められている。
なるべくは雑魚を放置して、親玉を討ち取る。
それが最善の策だと俺は思っている。
時間がオーバーしちまったら元も子もねぇ。
親玉を討ち取ってのタイムオーバーなら、そりゃ結局こっちの勝利で終わるが……人質を取られている以上、こっちは向こうのルールに則(のっと)っていかないといけねぇ。
ルールを決めている親玉を潰さない限り、ルールもクソもあるか。
しかも両チームの野郎共はほぼ全員、『漁夫の利』作戦で重傷を負っている。まだ完治に至っていない。
なるべく無駄な労力を使わないよう努めねぇと、体力の差でこっちが敗北する。
作戦や戦闘スタイルを組み立てるには個々人の役割と能力、そして力の配分が何よりも必要だ。怪我の具合も兼ねて全員のことを把握する必要がある」
一呼吸置き、司会進行役は両チームに視線を配る。
「まず戦闘重視パーソン。個人重視パーソン。面子を二つに分けようと思う。此処まで意見は? 反対意見でも遠慮なく出せ。考慮していくつもりだ」
日賀野の問い掛けに、俺等荒川チームはぽけぇっと口を開けて聞いていた。
ナニこの人。
リーダー性もカリスマ性もパねぇんだけど。
俺達、この人の率いるチームと対峙していたわけ?
よくもまあ、渡り合えていたよなぁ。
「なんかスゲェっスね、向こうのリーダー。まさしくリーダーって感じがするっス」
キヨタの発言に、高校からヨウ達に絡み始めた俺や弥生、タコ沢、利二はうんうんと頷く。
思考の回るリーダーが此処まで頼もしいと、チームメートも心強いよなぁ。
こっちのリーダーなんて思い付き戦法が大半。
取り敢えず考えてくれるようにはなったけど、今も周りが見えなくなったり、一人で突っ走るところが多いから苦労もする。
「ヨウも頑張っているんだけどな」俺、「カリスマ性がイマイチ」キヨタ、「考え無しが多いというか」弥生、「ただの馬鹿というか」タコ沢、「いえ、ただの馬鹿でしょう」利二、ボソボソッと会話して溜息。
勿論、ヨウにバッチリと会話が聞こえてしまい、我等がリーダーはこめかみに青筋を一つ浮かべる。
ヨウ信者のモトだけは、リーダーはヨウこそが適任だろうとフォローしているけど、その他中学時代からつるんでいる奴等からフォローは一切なく、寧ろシズや響子さんからチームの纏め方が上手いのは向こうだと溜息。
ワタルさんは言われてやんのってゲラゲラ笑っている。
荒川チームの様子を見ていた日賀野は得意げな顔を作り、余裕綽々に嫌味を飛ばす。
「ッハ、やっぱ馬鹿がリーダーをしているとチームは苦労しているみたいだな荒川。お前次第で苦労しているチームをこっちに吸収してもいいぜ?」
よってヨウのこめかみに青筋が三つほど立った。
「だぁあっ、るっせぇぞヤマト! テメェ等もっ、俺もちったぁ成長したろうが!」
立ち上がって地団太を踏むヨウは悔しそうに大反論をしている。
分かっているってヨウ。
お前はちゃんと努力しているし、成長もしている。
向こうチームのリーダーはスゲェとは思うけど、やっぱついて行くのはお前なんだ。
だからそんなに悔しがるなって。
話を戻し、日賀野の意見に俺達は賛同。
早速個々人の能力把握から始まった。
俺は勿論、戦闘に不向きだから個人重視パーソン組。その他に弥生、ハジメ、アズミに利二。健太もこっち側についた。
残りは戦闘重視パーソン。
つまり腕っ節のある奴等だ。
魚住は情報網に長けているから基本個人重視パーソンだけど、喧嘩もできるから戦闘重視パーソン組についている。
ハジメとアズミは頭脳派、弥生と利二は情報派、その他派は俺と健太という具合に細かく分類。
だけどハジメは療養中だから今日中に帰らないといけない。
彼はその旨をリーダー二人にしっかりと告げていた。
日賀野は個人重視パーソンの面子を見て、「特に上手く使わないとな」悶々と思案している。
「土倉が抜けるっつーことはアズミ、お前が戦闘スタイルの調整をしろ。土倉も携帯があるだろ? その場にいなくとも会話できる口があるんだ。連絡を取って調整しあえ。
情報二人は今から情報収集に行ってもらうとして……ケンは“港倉庫街”で活躍することになると思う。貴様のモノ作りに対する器用さはパねぇからな、その場で武器を作ることもあれば、倉庫の鍵を開けることもあるだろう」
実は山田健太は手先が器用で、特にピッキングが超上手い。
昔からプラモデルとか細かい作業をするのが大好きで、ピッキングもドラマを見て、ちょっとしてみようかなー? と好奇心から独自にピッキング法を開発。
簡単な扉なら開けられる。俺も何度か目に見たけど、手際の良さは天下一だぞ、あいつ。
あ、良い子の皆はマネしちゃだめだぞ? れっきとした犯罪だから!