青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
見ていた俺とヨウはというと、薄情なことに盛大に噴き出して大笑い。
い、いやだってよ?
あ、あの天下の日賀野大和が犬に苦戦しているっ!
苦戦しちゃっているんだぜ?! 笑うなって方が無理だって!
誰にだって弱点ってのがあるもんだよなぁ。
いや、いいじゃん犬嫌い。
犬が怖いと思う人は世の中にはゴマンといるぞ。
日賀野もたまたま犬が怖いと思う人種だった。それだけだろ? か、可愛いところあるじゃんか。
ゲラゲラヒィヒィと笑う俺達舎兄弟、犬を日賀野から剥がしてやる健太、そしてくしゃみを連発させている日賀野。
神社前で妙な光景が出来上がっていた。
取り敢えず、いっちゃん酷い薄情者は俺等舎兄弟だと思う。
人の不幸を見ては腹を抱えてゲラゲラと笑っているのだから。
涙を流して笑い転げてる舎兄弟の俺達は、どうにかこうにか日賀野の災難を見送り、謝り倒してくる飼い主と飼い犬も見送り、大丈夫だったかと声は掛けてやる。
でもキャツの顔を見るだけで俺もヨウも噴き出した。
だ、駄目だ、これは辛い。辛いぞ。
暫く笑いの発作、おさまらないかもしれないっ! タコ沢以来の笑いの発作だっ! 死ぬっ、笑いで死ねる!
「ククッ。ダッセェ、マジダセェ! 犬如きに必死こくとかっ! 相変わらず犬に好かれているなヤマト! マジでダッセェ! そこまで愛されているなら犬っころを愛してやれよっ、結婚してやれ!」
「荒川っ、貴様っ」
「ば、馬鹿そんなこと言ってやるなってヨウ。だ……誰にだって……ククっ……怖いものがあって」
「だっ、だってあのヤマトさまがワンちゃんをビビッているんだぜ? ククッ、ぷはははっ! 駄目だっ、お、俺、腹がいてぇ! 呼吸困難で死ぬ!」
そこで大笑いするなって、俺にも感染るだろ!
しゃがみ込んで笑い転げる俺とヨウ、盛大な舌打ちを鳴らしながら健太にポケットティッシュを貰って洟を噛んでいる恐ろしい不良様は青筋を二本ほど立てた。
どうしよう、それさえ怖くないんだけど!
寧ろ可愛い、可愛いぞ! 愛でてやりてぇ!
ナニこのギャップあり過ぎる不良、俺、この人にフルボッコされたのかよ!
大声で笑う俺とヨウを睨む日賀野は、忌々しそうに舌を鳴らしてきた。
「貴様等……俺は動物アレルギーなんだ、特に犬はアウト、それだけだ! 怖い? ほざけ! ……あんま笑っているとブッコロっ、しゅん! くっしゅんっ! くっしゅん! へっくしゅん! あ゛ー! くそっ!」
ぶはっ――!
薄情舎兄弟、再び噴き出して発作。
痙攣にも似た発作を必死に抑えて、
「ブッコロしゅんって」
ヨウは噛んだことに可愛いと膝を叩いて身悶え。
笑い過ぎて息も絶え絶えになっていた。俺もどうにか笑いを抑えようとするんだけど、今のはない。ないよ。
天下の日賀野大和殿がブッコロしゅん。一生忘れられない笑い話だぞこれ!
「や、ヤマトさんっ、どんまいですっ」
流石に今のは健太も堪えられなかったっぽい。盛大に噴き出していた。