青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「なあなあ山田。俺の仲間になんねぇ? ぜーってぇこっちの方が楽しいって」


こ、こいつはもう……余計な事をする。

額に手を当ててガックリ肩を落とす俺を余所に、ヨウは健太に仲間にならないかと誘いに誘う。


「お前がいればサボり余裕じゃん! な?」


ピッキングの腕に目を付けたヨウが、仲間のためチームのためそして自分のおサボリのために健太を勧誘。


「お、おれ?」


度肝を抜いている健太は日賀野の目を気にしながら無理だと丁重に断るけど、


「安心しろって」


ヨウは握り拳を作って健太の肩に手を置いた。


「俺、犬相手でも超イケるから。犬なんて怖くねぇ。テメェのリーダーとは違ってさッ、イッデッ! ヤマト! ナニすんだよ!」

「るっせえ! ケンはこっちのチームで決まりなんだよ。俺のチームメートに媚びているんじゃねえぞ」



「だっ、誰が媚びているって?
女みてぇな言い草っ、聞き捨てなんねぇ! そういうならテメェだって舎弟にちょっかいばーっか掛けているじゃねえか!」


「ッハ、俺は媚びているんじゃねえ。正式に勧誘しているんだよ。
貴様のチームメートは俺のチームメート、だ。俺に利得がありゃ誰だって勧誘するんだよ。チームも何もクソもカンケーねぇ」



「出た出た! そのジャイアニズム! クソ腹が立つ! 犬恐がりめ!」

「チッ、貴様は能のあるチームメートを使い切れてねぇだろーが。この単細胞。ついでに女ベタ」



「あ゛? テメェッ、言っちゃならんことを……ぶっ飛ばされたいか。ヤマト!」

「あ゛あ゛ん? 上等だ。表に出ろ、荒川!」



バチン。

青い火花を散らし合っている両者リーダーに俺と健太は手を取り合ってガタガタブルブル。


ナニこの人達、メッチャおっかないんだけど!


さっきまでフツーに会話してたじゃアーリマセンカ!

どうしてまた喧嘩しようとするんだよ! 母音に濁点とかっ、マジ恐怖なんですけど!

「不良はないよな」

健太の涙声に、

「お前も不良だろうよ」

ツッコむ俺、勿論涙声だったりする。


何が一番泣きたいかって俺と健太で仲裁に入らないといけないことだ。


この面子で止められる気がしない、しないんだけど。

地元で有名過ぎる不良様二人を止められる気がしないと思っているのはきっと、俺だけじゃないよな。健太!


だ、だ、だけど喧嘩をしている場合じゃない。

意を決して俺は健太と二人で恐る恐る仲裁に割って入る。


同着で「おや? そこで馬鹿をしているのは不良の皆さんじゃないか」能天気で皮肉った笑声が聞こえた。


振り返ればニッコリスマイルキラーの笑顔を浮かべている須垣誠吾生徒会長が立っている。


その向こうには生徒会役員の皆様もいるみたいだけど、すっかり身を萎縮させて……嗚呼、すんません。

不良が怖いんですよね? 仲間内の俺達も怖いです。心中察します。


何しているのだと腰に手を当て、須垣先輩は眼鏡のブリッジを押し上げた。


「他校生まで紛れて……仲良く遠吠え中かい? 野良犬みたいな奴等だね」


ピキ、カチン。

「遠吠え?」

眉根をつり上げるヨウと、

「野良犬だと?」

舌を鳴らす日賀野、二人のこめかみにくっきりと青筋が浮き立つ。

本当のことじゃないかと須垣先輩は冷笑した。


「それとも今の光景はじゃれ合う飼い犬の光景?」


鼻で笑う須垣先輩に二人のこめかみに青筋がまた一本。

あ、相変わらず不良さんを怒らせる事が得意だよなこの人。


その肝の据わりようにはソンケーするぞ。


クスリと笑う須垣先輩は生徒会室はもう開いているみたいだと役員に声を掛け、俺達には向こうで話そうかと踵返す。


どうして俺達が現れたのか、須垣先輩は見越していたみたい。


敢えて一人になる選択肢を取る先輩は、生徒会役員を守りたいのか、それとも……。


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